~身近な事象から「これからの社会」を考える~

 竜谷小学校の学区には、総合的な学習の時間の教材になり得る自然事象や社会事象が豊富にある。このような身近な事象を子供たちは、見過ごしてしまうのだが、教材化し、授業で課題追究していく中で、子供たちは、自分たちの住んでいる地域を見つめ直すことができる。そのことが、地域への愛着となり、自分にできることを真剣に考えることにつながっていく。このようなことから、今年度、本校では、愛知教育大学生活科教育講座教授の加納誠司先生を講師に、各学期1回ずつ、計3回の校内授業研究協議会を開き、総合的な学習の時間を軸にして、研究を進めていくことになった。
 その第1回目として、7月10日に1学期の校内授業研究協議会を行った。協議会の対象授業となったのは、6年生の単元「『新型コロナウイルス』を通して他国の文化や習慣を知ろう」の授業である。「新型コロナウイルス」は、地域の事象とはいえないが、子供たちにとっては、現在、最も関心の高いことで、「身近な事象」といえるのではないか。そして、「新型コロナウイルス」の影響や対応について考えていくことが、自分たちが住んでいる地域のこれからを考えていくことになるのではないかと考え、教材化することにした。
 授業者は、「なぜ、日本は、他の国と比べて新型コロナウイルス対策が厳しくないのに、感染者数は少ないのだろう」という学習課題で単元を貫き、課題追究を通して、各国の国民性や習慣の違いを浮き彫りにしながら、自分たちが住んでいる国「日本」の国民性や習慣を見つめ直し、日本のよさについて考えていくことを目標とした。さらに、日本だけではなく、日本と比較しながら他の国のよさも考えていこうと試みている。
 現在、本校の6年生は、本来入るべき6年教室ではなく、図工室を6年教室に衣替えして学習している。35人と人数が多く、本来の教室では「密」になってしまうためである。子供たちは、「なぜ、6年生は図工室で授業をしているのか」という疑問をきっかけにして、学校再開前後の変化から、日本の新型コロナウイルス対策へ目を広げ、調べを進めていった。また、その他の国の新型コロナウイルス感染者数のグラフから他の国の新型コロナウイルス対策に関心を広げ、調べていった。
 協議会の対象授業では、「厳しくない対策の中、日本の感染者数が少ない秘密を探ろう」という学習課題で、本時までに調べたことを根拠として、子供たちは、意見交換を行っていった。「他の国の人はハグをする」「マスクをする習慣がない」「他の国の人には危機感がない」「日本語と他の国の言葉では、舌の使い方が違う」など、意見は多岐にわたったが、授業者は、「性格」「生活様式」「言語」「地理」の4つの項目に分けて板書をしていった。いろいろな意見が出されたが、この意見交換を通して、出された意見の根拠が次第に曖昧になってきたため、さらに「秘密」を探るために必要な情報を集めないといけないという子供たちの意欲を高めることはできたと考える。
 加納誠司先生からは、本校の研究テーマである「『分かる喜び』
を実感できる授業の構築」と重ね合わせ、個の思考と友達の思考
との往還を重ね、再び個と向き合ったとき、新たな価値が創出さ
れることが「分かる喜び」につながるとの御指導をいただいた。
この御指導をもとに、6年生の実践は続いている。

報告者:竜谷小 前田 康幸先生