~「夏山八幡宮の火祭り」の学習を通して~

 夏山町には1500年の歴史をもつ火祭りがある。鬼役のものが燃木を持ち、参拝者を追い回す様子が珍しいことで知られている。児童に聞くとその祭りのことは知っており、参加した者もいるが、その祭りに対する関心はあまり高くない。そこで、児童が1500年も続く地域の祭りの素晴らしさに気づき、地域の行事に積極的にかかわり、地域に対する誇りや愛情を育てることを目標として単元を組んだ。

 まず、児童に教師から火祭りについて問いを繰り返し、自分たちが知っていると思っていた火祭りには、知らないことが多いことに気づかせ、火祭りのことを調べる動機づけを行った。

その後、自分の両親や祖父母、上級生への聞き取り調査を行うことで、自分の家族や地域が火祭りかかわっていることを感じることができた。その中で、これまで火祭りに参加したことがなく、関心の低かった児童Aは聞き取り調査をした結果、父親が火祭りの鬼役をやったことがあり、自分の住んでいる地区が火祭りの運営の中心を担う地区の一つだったと知り、今年は火祭りに行きたいと意欲を高めることができた。

 さらに、火祭りの運営に長くかかわっている方の思いにふれさせたいと考え、学区の総代会長さんを授業に招くことにした。総代会長さんとは、これまでの学習で分かったことを話したり、疑問をぶつけたりするという交流を行った。また、祭りの鬼役が担う神事の一つ「火起こし」を体験させてもらった。さらに、火祭り一週間前に行われる準備会にも招待いただき見学をした。総代会長さんの「私たちが小学生のころは、学校の児童がほぼ全員参加し、鬼を囃し立て、鬼にたたかれた回数を自慢し合ったものだ」「伝統を絶やすわけにはいかない。5年後、10年後は君たちも鬼役をやってほしい」と熱く語る姿、また、地域の人が大勢集まって、楽しそうに準備をする姿にふれた児童は、地域の大切な行事としての火祭りへ愛着を深めていった。

 その後、学習のまとめで、「火祭りのすごいところはどんなところか」を話し合う場面では、祭りの準備や内容、歴史、鬼役の人や受け継ぐ人の気持ちなど、火祭りのすごさを多面的にとらえることができ、「火祭りにはすごいところがたくさんある」「火祭りを大事にしたい」と気持ちを高めることができた。そこで火祭りを大事にするために「今の自分たちにできることは何か」と問いかけると、「自分たちがまずは参加して、鬼を囃し立てて盛り上げる」「学校の友達を誘う」というアイデアを出した。

 自分たちで「鬼をマジにさせよう」というキャッチコピーを考え、全校に向けて呼びかけた。他の学年の児童も火祭りへの参加意欲を高め、火祭りの日を心まちにしている。地域素材を教材化し、地域の人の思いにふれ、実際に体験活動を行う単元を組むことで、地域の祭り「火祭り」を自分事として捉え、「火祭り」の価値に気づき、自分からかかわっていこうとする意欲を高めることができた。