ササユリを大切に育てよう

【単元のねらい】

  • ササユリの保護活動を通して、生命のつながりを考えた活動や観察記録を積み重ね、自分の課題を見つけることができる。
    (追究力…課題を見つける力)
  • 見つけた課題について、自ら調べたり、かたのササユリの里育成会の方に話を聞いたり、友だちと相談したりしながら、夢中になって追究することができる。
    (追究力…意欲的に追究する力)
  • ササユリが喜ぶ環境を考えながら、これまでの保護活動を見直したり、図書資料で調べて分かったことをまとめたりしながら、友だちに分かりやすく伝えることができる。
    (豊かな表現力)
  • ササユリの観察を通して、友だちと共に追究しながら、友だちのよい考えを認め、自分に生かすとともに、ササユリを大切にする気持ちを高め合うことができる。
    (共に学ぶ力)

 

【実践の様子】

 子どもたちは、1年生の時に一人1ケースのカブトムシの飼育を経験しているので、昆虫に対しては慣れていると思われたが、幼虫が怖いと言う子もいた。兄弟・姉妹のいる子は、家庭に持ち帰ったヤママユガの飼育の様子を見たり、聞いたりしていて、ヤママユガに対しての関心は高いと思われる。

 4月に4年生からヤママユガの卵をもらって羽化を待ったが、5月を迎えても誕生しないため、自然のヤママユガを探すことにした。しかし、保護色であるヤママユガを見つけることは容易ではなかった。ヤママユガを探しながら、校舎周辺にササユリのつぼみを見つけた。そこで、子どもたちは、一人ずつササユリに名前をつけて観察をすることにした。自分が住む地域のササユリも継続観察し、学校で種から育てているササユリや自然に育つササユリと比較することで、ササユリの保護活動の重要性を感じ取らせたいし、次の3年生にヤママユガとササユリを引き継ぐためにはどうすればよいかという自分の想いを積極的に語り合える子どもに育てたい。

 形埜地区に自生するササユリは、園芸化が難しいといわれている。ササユリは、山地の草原や明るい森が好きで、古事記や万葉集にも登場するほど人々を魅了してきた。小さな種から初めて花をつけるまで5年から8年もかかる。6月上旬に開花するが、花の寿命はわずか10日程で、遠くの虫に開花をはやく知らせたいためか、強い香を漂わせる。花を散らすと、保護色や擬態で周囲に溶け込み、簡単に見つけることができなくなってしまう。受粉を経て種が実り、木枯らしを利用して種子を遠方へ飛ばし子孫を増やしている。

 形埜地区には、人害や獣害に遭い、激減していたササユリを保護・育成するために、ササユリの群生地やそれらを守り育てている育成会の方々がいる。一本のササユリの寿命が何年も経過して花を咲かせている現状を知るとともに、育成会の方々の保護活動の苦労や難しさを実感することで、植物や生き物への思いやりの心を育てることができる。このササユリの保護活動を通して、ふるさと形埜の生き物をはじめ、地域を愛する心を育んでいきたい。そこで、先輩が残した観察記録を活用し、育成会の方々と共同調査を行って、友だちと共に追究することで、形埜の自然環境を自分たちで守っていこうとする子どもに育てたいと願い実践している。

 

○豊橋市伊古部町へササユリ見学(6/9)

 かたのササユリの里育成会の方と一緒にササユリの先進地視察に参加させていただくことができた。伊古部町のササユリの里では、斜面一帯に大きく開花したササユリやつぼみのササユリなど、3500本を目の当たりにした。遊歩道はテープで区切られ、猪脅しや檻が置かれていたことに子どもたちは感嘆の声を発していた。豊橋市のササユリ見学で学んだことや観察を通して気づいた発見や疑問を、形埜のササユリ観察で考えたことと比較しながら伝え合い、ササユリ見学での疑問を「かたのササユリの里育成会」の会長さんに聞き、自分にできる保護活動を考えていく授業を公開することにした。

 

○ササユリについての新しい発見やぎ問を発表し合い、育成会の鈴木さんから学ぼう(6/10)

 前日の豊橋市伊古部町のササユリ見学を振り返り、学校のササユリと比較しながら話をしていくように仕向けると、ササユリの花弁は普通6枚なのだが、伊古部町のササユリに8枚の花弁の数が気になった。8枚になった理由を栄養が行き過ぎたからと考えた子どももいたが、原因は突然変異なのだろうということだった。(後日、ササユリの花弁は3枚で、外側の3枚はがくということだった。8枚のササユリは、3枚が花弁で5枚ががくということを鈴木さんから学んだ。)

 次に、つぼみが固いことを発見した子どもがいたので、伊古部町でもらった山百合のつぼみを触り、硬さを調べてからおしべとめしべの数を確かめることができた。

 伊古部町のササユリの数が3500本ということを資料で知り、形埜の2500本と比較して多すぎだと感じ、形埜も負けずに増やしたいと思いをぶつける子どももいた。

 その後、ササユリの花の咲く向きに目がいき、開花は下向きなのに花が散ると上向きになるから、種が実って飛ばすときは風に乗って遠くへ飛ぶから、ササユリは頭がいい花だと発言した。それから、花の色は3種類あることに話題がいき、鈴木さんから、ササユリの葉の形が違うことを教えていただいた。伊古部町のササユリの葉は、山百合の葉に似ている形で、形埜は笹の葉と同じということだった。伊古部町のササユリの種や球根を形埜のササユリと一緒にするのは、生態系が変わってしまうからやめた方がいいということであった。

 最後に、ササユリの天敵の話になり、猪とノネズミがササユリの球根を食べること、サルは球根と実を食べること、虫も食べることを知った。伊古部町には猪脅しと檻があったことが話題になり、形埜も天敵からササユリを守る方法を考えなくてはいけないことと、自分たちができる保護活動を展開していくことを約束して授業を終えた。