「デンデンガッサリ」を通して

 山中学区には、「デンデンガッサリ」という、米作りの1年間の流れを歌や所作で演じ、五穀豊穣を祈る古式ゆかしい素朴なお田植え神事が今でも受け継がれている。地域の方の思いに触れ、愛する郷土の伝統や文化を未来へつなげていこうとすることは、とても価値があると考え、5年生は伝統芸能「デンデンガッサリ」の歌や所作を保存会の人達に教えてもらい、発表する場を設けている。また、「デンデンガッサリ」の所作であるお米作りを学区の人達の協力のもと1から取り組んでいる。

 4月当初、5年生の子どもたちはデンデンガッサリの意義や価値を知らず、ただ体験がしたいという気持ちが強いだけであった。そこで、デンデンガッサリ保存会の方々からデンデンガッサリの歴史や所作や歌などを教えていただく機会を設けた。「お米の豊作を願う儀式なんだ!」とデンデンガッサリについて知っていく中で、昔の人がお米作りにどれだけ苦労していたか話を聞いた。今は人の手だけでお米作りをしている人はほとんどいないし、最初から最後までやるのは難しいということを学ぶことが出来た。

 夏休みが終わると、10月の秋の山中八幡宮例祭での発表に向け、本格的に「デンデンガッサリ」を受け継ぐための準備が始まる。

 練習に取り組む前に、山中学区にある様々なお祭りについて、その特徴や祭りに込められた願いを調べる活動を行った。子どもたちは、多くの祭りが受け継がれている中で、市の無形文化財に指定され、700年以上も受け継がれてきた「デンデンガッサリ」が、山中学区でとても貴重な伝統文化であることを感じていた。

 子どもたちは、歌や所作を教えてもらう中で、保存会の人たちの真剣な姿や優しく関わってくれる姿に触れ、歌の意味を調べたり、保存会の方の思いを聞いたりして、自らの思いや願いに迫る姿があった。直接関わっていただく機会を多く設定したことで、子どもたちの発表への意欲も高まったと言える。

 9月には、保存会の方をお招きし、練習の成果を見ていただいた。セリフの言い方や声の大きさを褒めていただき、より良くなるようアドバイスをしてもらった。米作りでは、10月に入り、稲刈りを行った。今年は豊作で昨年の2~3倍もの実がなったため、時間は長くかかったが、稲刈りを通し、収穫の苦労と喜びを味わうことができた。

 

 これからは、これまでの活動で蓄えた感謝の気持ちや郷土への思いを、子どもの主体的な活動によってさらに高めていきたいと考える。そして、子どもたちの郷土を愛する心をより確かなものにしていきたい。

報告者:山中小学校 山口 真実先生