「大切な仲間と自分」 ~「世界禁煙デーキャンペーン」の取り組みを通して~ 

 平成21年の税制改革大綱により、同22年10月からたばこ1本につき税金が3.5円引き上げられ、たばこメーカーの値上げ分の1.5円を合わせて1本5円・1箱100円の値上げが実施された。現在、たばこを取り巻く環境は急速に変化している。駅やデパートなどの公共施設には喫煙スペースが設けられたり、路上での喫煙に罰金が科せられるところができたりしている。たばこ本体に注目してみると、箱に記載されているたばこの害に関する文がより具体的なものに変わり、禁煙についての動きが加速してきたように感じられる。

 1年生では、「大切な自分と仲間」を総合学習のテーマとし、美川中学校の伝統である健康教育の一環として5月31日の世界禁煙デーに合わせて学区で禁煙キャンペーンを行った。

 世界禁煙デーキャンペーンを行うにあたって、まずはタバコの現状を知ることが必要だと考え、生徒個人で調べ学習を行い、その調べ学習の成果をもとに、班ごとにテーマを設定した。そして、決定したテーマをもとに、班ごとのリーフレットを作成した。各活動場所にポスターとして掲示していただくものはA4サイズで、キャンペーンで配布するものはA5サイズにした。

 5月31日(金)、作成したリーフレットと禁煙を呼びかける横断幕を持って、事前にお願いしてあった学区の事業所の店頭で呼びかけをさせていただいた。「呼びかけをがんばろう」という気持ちはあるのだが、初対面の人にどうやって声をかけようか、相手が喫煙者だった場合、相手の気持ちを害さないようにするためにはどんな言葉をかけるとよいのか、考えながらの活動になった。

 活動を通して、多くの人にリーフレットを受け取ってもらうことができた。しかし、生徒の中には、「オレはたばこを吸うからいらない」と言われたケースもあり、たばこを吸う本数を減らすように呼びかけることの難しさを学ぶことができた。

 活動後に家族にも呼びかけができた生徒、たばこは人体に悪影響が出るので、自分が20歳になっても吸わないようにしようと考えた生徒、それぞれがこの禁煙キャンペーンを機にたばこについて考えるようになった。活動後の生徒の感想の中に、「吸っている人はいいかもしれないけど、まわりの人にも被害がおよぶ場合もあるから、たばこはあまりいいと思わない。」というものがあった。

 前述のとおり、1年生の総合学習のテーマは「大切な仲間と自分」である。この禁煙キャンペーンを通して、学んだことはたばこの害だけだはないと思う。たばこが自分の体にどんな影響を及ぼすのか、そして、たばこの副流煙によって自分以外の人に影響を及ぼしてしまうこと、つまり、「自分の体」と「仲間の体」について考える機会になったのではないかと思う。

 普段学校で生活をしていると、周りには友達がいて、先生がいて、家に帰ると親、兄弟などがいて、初対面の人に自分の気持ちを伝える機会は多くない。そんな中で今回の活動を通して、初めて会う人に、普段とはちがう丁寧な言葉で、相手の目を見て自分の考えを伝えるという経験ができたことは大きい。来年度に控える職場体験学習では、実際に仕事を体験することになる。わずかな時間ではあるが、社会に出て、中学生としてではなく社会人として生活することになる。今回の活動を通して学んだ、礼儀や挨拶の大切さ、言葉遣い、相手の目を見て話すことなどは、職場体験に向けてのいい経験になったのではないかと感じた。