環境学習「人間と生き物の共生社会を考えよう」
単元のまとめの授業で、共生社会を考えるときに、それぞれの立場での状況を明確にするために人間と動物の立場に立って困っていることを出し合う活動を設定した。
○イノシシ
山の餌よりももっとおいしいものがあるからやってきた。
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○シカ
山に餌がなくて仕方なく降りてきた。臆病なので脅かさないでほしい。
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●農家
農作物や庭の柿などが荒らされて憎い。対策をしてもやられてしまう。
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●資源保護の人
□保護して生態系を守らないといけない。
■人の生活のために駆除する必要がある。
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それぞれの立場での思いが整理されていく中で「資源保護の人」は、二つの考えがあることが浮き彫りになった。つまり、イノシシを生態系の一部ととらえてその価値を考える視点と害獣ととらえて 駆除し、資源として考える視点である。共生社会を考える上で、考えの折り合いをつけるとき、大切になるのは「バランス」というキーワード、そしてイノシシを「資源」と考える視点である。 私は、「個体数のバランス」という意見を引き出し、板書によっておさえた。さらに、GTの出によって自分自身の課題(自分事)としてとらえるよう支援した。GTは、それぞれの種が生態系で結ばれていることを実感させるための活動を行い、1つの種がなくなるとそれぞれの結びつきが遠くなることを実感させ、次に生徒達それぞれに「何ができるのか」という視点を与えた。今回のGTは、COP10のアドバイザーを務めた長谷川明子さんに依頼した。長谷川さんは、学びをESDに昇華させるためには、「自分事」という視点がキーワードだと語る。GTの出によって、獣害のために自分自身は何ができるかという視点で考えることを意図した。下記のH子の感想にあるように生徒達は、共生社会を深く考えることができるようになってきた。そこには、ESDで大切な学習事項となる「公平性」「有限性」「責任性」「協調性」が込められていることを感じる。「水」を通した共生社会では、人も動物も平等でなくてはならないこと。害獣であっても、種としての役割があり、人間がバランスを整えてこそ共生社会が実現するという責任。これらが、人のつながり、教材のつながりを意識した授業構成によって実現した。さらにこれまでの学びをH子は、共生社会のためには「緩衝帯の設置」などの棲み分けが必要であると発表した。共生社会とは、ぞれぞれの種の持続性を第一に考え、人間が維持する努力をする必要があるという意見を導きだした。「自然と人のかかわり方」をこの子なりに考えた成果であるといえるだろう。