ふるさと笑顔プロジェクト~楽楽苑のみなさんとの交流を通して~ 

 我が国は超高齢社会(4人に1人が高齢者)を迎え,今後ますます高齢者人口が増えることが予測されている。高齢者問題も数多く起き,解決のための対策が急がれている。そんな中,井田学区に通う子の家庭の多くは核家族で,祖父母,曾祖父母と同居している子供はほとんどいない。そのため,行事があるときや週末などに祖父母と食事をする,会おうと思えばいつでも会えるなどという子はいるものの,高齢者と日常的に関わっている子は少ない。だれもがいずれ高齢者になるのである。これからの超高齢社会を担っていくことになる世代の子供たちに,「高齢社会」「高齢者問題」に少しでも関心をもたせ,将来を見通したとき,今,自分はどうあるべきかということを真剣に考え,行動する子になってほしいという願いのもと,本単元を計画した。

 まず,「ふるさとボランティア」として,学区にある高齢者福祉施設「楽楽苑」のみなさんとの交流を継続的に行うようにした。この活動は,井田小学校の5年生が継続的に行ってきたこともあり,「次はいつ来るだ」「今日は来んのか」と楽楽苑の方が子供たちの訪問を楽しみにしてくださっている。そのことを今年度も5年生になった学級の子供たちに伝えると,「行ってみる」と関心をもった。1回目の訪問は,スタッフの皆さんの協力を得ながら施設を見学させていただき,どんな人がいるのか,どんなことをしているかなどを和やかな雰囲気の中で知る機会とした。その時の様子から子供たちは,「みんな優しかった」「交流が楽しみ」と次の活動への意欲を高め,本格的に交流活動を行っていくことになった。交流活動では,日常的に高齢者と関わることが少ない子供たちが,関わり方を学んでいくこと,相手を思いやったり気遣ったりしながら関わることで喜んでもらえることのうれしさ,お手伝いなどで役に立てることの達成感などを味わいながら,自己肯定感を高めていくことなどをねらいとしている。

 一方,新聞記事やインターネットを活用して,実際に起きている高齢者問題について調べた。認知症や介護の問題の他にも,「交通事故に会う高齢者は小学生よりも多い」「近所づきあいがなく社会から孤立すると,犯罪に巻き込まれたり犯したりしてしまう」「高齢者の犯罪は19歳以下の人の犯罪よりも多い」など,子供たちもびっくりするような問題が次々に見つかった。そして,「寿命がのびることはいいことだけれど,高齢者の問題が増えているのは心配。私たちが大人になったらどうなるんだろう」と,明るくあってほしい自分たちの未来に暗い影を落とした。このことは,34人中27人が高齢者問題とは何が起きているのか知らないと答えた学級の子供たちに,切実感をもたせることができた。

 そして,現在,子供たちは地域に跳び出し,「井田は高齢化しているのか」を自分が住んでいる地域を中心に聞き取り調査をしている。調査前の子供たちの意識は,児童が1000人以上もいる学校であることからか,高齢化していないと考えている子が34人中30人だった。実際には20%以上の人が65歳以上の高齢者である。学区に住んでいる人に聞き取り調査をして実態をつかませ,インターネットや新聞で知った問題は,自分の身近でも起きているかもしれないことに気付かせたい。

 今後の実践は,ふるさと井田で起きる高齢者問題を減らすためにはどうすれば良いかを話し合い,今,自分たちができることを考えさせたい。考えたことは,「つまでもれもが笑顔・安心で暮らせるいだ」を創るために「ふるさといだ宣言」とし,学区に広めていく活動を計画している。

 自分たちが住む地域のことを主体的に考え,進んで関わり,行動していく子を期待したい。