~翔南中学区が自然と共生するために、自分たちができることは?~

 本校は、エコスクールとして開校6年目を迎えた。「光・風・緑」の自然エネルギーを生かした設備や、「エコの日」を設けて資源回収の取組も行われている。学区に目を向けると、自然環境に配慮した住宅地はあるものの、駅前を中心に南部地域では土地開発や区画整理が行われ自然が失われつつある学区でもある。住宅開発により今後、人口が増加することも予想される。一方で、区画整理によって公園が作られたことで、緑を増やす活動も行われている。この学区の変化を様々な視点から見、考えることにより、自分たちの住む街に関心をもち、切実感をもって課題を見つけ追究していくことができるであろうと考え、実践を行った。

 単元の導入では、「翔南中ECO調査隊」として校内にある環境に配慮した設備を調べた。太陽光パネルだけでなく、ヒートアイランド現象の緩和を目的とした保水性ブロック、煙突効果を利用して自然換気を行い夏季の室内環境を改善する吹き抜けの中央階段など、数多く設置されていることに生徒たちは驚いているようであった。次に、ゲストティーチャーとして、翔南中の開校に尽力された少年自然の家所長川口厚先生をお招きし、どうしてエコスクールとして開校したのかをお話いただいた。おお話の中で「自然と共に生きていく未来へのヒントがこの学校にはあふれている」という言葉が、生徒の心に強く印象として残ったことが感想から読み取れた。

 次に、市環境保全課の方をゲストティーチャーとして招き、生物多様性についての講話をしていただいた。人間の生活は他の生き物と関わりが深いにもかかわらず、年間約4万種もの生物が絶滅していることや、外来種が増加していることを学び、「翔南中学区を生き物が多く生息する学区にしたい」、「自分の身近な地域の調査をしていたい」という思いを強めることができた。そこで、夏休みに通学路や家周辺の環境を調査した。

 2学期に入ると、夏休みに調査した資料をもとに、学区のバイオリージョンマップを作成し、学区の特徴や生き物と共生していくための課題について話し合いを行った。話し合いの前半では、学区の自然は豊かだという意見が続いたが、話し合いが進んでいくと、駅周辺の自然がないことに着目し、「自然が少ない場所は、住宅が多い所や駅周辺だから、そういった場所でも環境に優しい取組をしないといけない」、「街の発展には開発も必要だけど、今ある自然を大切にして残していく必要がある。駅周辺は、環境のことを考えた取組をしているか調べたい」という問題意識が高まった。そこで、駅前にある事業所が、環境に配慮した取組をしているのかを実際に調査することとなった。

 駅前調査では、駅前発展会に加盟している25か所の事業所を、6人程の班を編成して訪問した。事業所の方から直接お話を伺ったり、実際の様子を見せていただいたりし、各事業所で事業所の特徴に応じた環境に配慮された取組がなされていることに気づくことができた。調査をして分かったことを学級で発表し合い、学びを共有した。報告会後の生徒の感想には、「環境のことを考えた取組はあまりないと思っていたけれど、多くの事業所で様々な取組がされていて驚いた。」、「自分たちでも取り組むことができる活動もあったので、見習って自分たちも取り組んでいきたいと思った。」と記されており、自分たちが取り組めることを実践していくことが大切であるという思いを強めることができた。

 最後に、単元で学んだことを壁新聞にまとめた。壁新聞には「翔南中学区には、環境に配慮した取組がたくさんあった。一人一人が身近な小さな取組を積み重ねていくことが大切だと思う。」、「翔南中学区が、自然と共生をして、人にとっても自然にとっても住みやすい街だと自慢できるようになると嬉しい。」とまとめられ、自分たちの住む街に関心をもち、切実感をもって課題を見つけ追究していく姿が見られた。壁新聞を冊子にまとめ、訪問した事業所に配付し単元を終えた。

 エコスクール翔南で学んだ生徒が、社会の担い手となった時、学区の環境に目を向け、自然と共に生きていこうと努める姿を願っている。決して大きな取組を期待するのではなく、自分たちができる小さな取組の積み重ねが環境保全に繋がると信じて実践を続けていってほしい。