城南シティを守ろう ~学区の災害から学ぶ防災学習~

1 はじめに

 学習指導要領では、安全指導として「防犯を含めた身の回りの安全、交通安全、防災など、自分や他の生命を尊重し、危険を予測し、事前に備えるなど日常生活を安全に保つために必要な事柄を理解し、進んできまりを守り、危険を回避し、安全に、行動できる能力や態度を育成する」と記されている。先の東日本大震災では、地震や津波の恐ろしさを知り、今後、東海地方にも訪ずれるであろう大地震に備えることは、喫緊の課題となっている。そこで、想定外の災害や大地震に備え、いかなるときでも自らの命を守ることができるように「ふるさと城南」の防災に目を向けていく子どもを育成することが大切と考え、本単元を計画した。

2 実践の概要

(1)学区で起こりうる災害について知ろう

 防災について学んでいくために、城南学区に起こりうる災害について目を向けた。すると「占部川では2010年に大雨による氾濫があったらしい」と子どもたちから学区の災害について話題があがった。そこで、本による調べ学習や学区民への聞き取り調査をするよう働きかけると、子どもたちは学区にある占部川では、近年まで洪水による被害が出ていた事実を知った。

 そこで、岡崎市役所の河川課に依頼し、さらなる占部川の歴史などに教えていただく場を設定した。また、市役所防災危機管理課の協力の下、学区のフィールドワークを計画した。そこでは、占部川の洪水を防ぐために行なわれた護岸工事の様子を見学したり、洪水にあったときの危険ポイントなどの見学をしたりすることができた。洪水を防ぐために愛知県や岡崎市がさまざまな取り組みをしていることを学び、子どもたちは自分にでもできる防災への行動があるのではないかと気づきを深めていった。

(2)身近な防災について

 災害が起こったときに、どのような行動をするべきかを考える必要があることに気づいた子どもたちは、まず、防災マップを作ることにした。それぞれの子どもの気づきを見える形にすることが大切であると考えたからである。この防災マップ作りを通して「地震が起こると、この塀が崩れて危なそう」「土地の低いところは水害の危険性がある」といった、災害時における危険性について認識することができた。また、城南小学校の防災倉庫を見学し、災害時に必要となる用具に触れることで、被災時のイメージをより深めることができた。

 自分たちが知っているだけでは、学区の人たちを助けることはできないと考えた子どもたちは、何か発信できる方法はないかと考えた。城南小学校には、総合的な学習の一環として、学びを発信する城南シティカーニバルがある。子どもたちが学んできたことをお店として発信し、学びを広めていく場である。子どもたちは学区民や保護者がたくさん訪れるカーニバルで、占部川で学んだ防災を発信していくことで多くの人の命を守ることができるのではないかと考え、行動した。

 

(3)城南学区に防災の意識を広めよう

 城南シティカーニバルでは「出動!災害レスキュー隊」と銘打ち出店した。岡崎市消防署と学区の消防団を招き、実際に消火器体験コーナーを設けたり、消防車の乗車体験を行ったりした。また、防災クイズや非常食試食ブースなど、自分たちが学習してきたことが伝わりやすいように、六つのブースを設置した。この活動を通して、防災とは自分たちの意識そのものを変えていくことこそが大切であることに、多くの児童が気づくことができた。

3 おわりに

 防災意識を高めるには、いかに災害を自分事として捉えるかが重要である。しかし、被災経験のない子どもたちにとって、災害の恐ろしさや実感をもつことは難しい。これは、本校の児童のみに限らず、今後の防災教育の課題である。

 今回の防災学習を通して、災害が起きたときに臨機応変に対応していくためには、地域の方との協力が大切であることを学んだ。今後も、地域の防災訓練に積極的に参加したり、近隣の方とのあいさつをしたりするなど、子どもたちのコミュニケーション能力を高める場を大切にしたい。また、一人一人の防災意識の高まりこそが公民的資質を形成する上で重要であることに気づかせたい。