常南の野生動物とつなごう 友達の輪

 常磐南小学校の玄関を入ると、大きなシカのはく製が迎えてくれる。理科室には、この地域で捕獲された様々な野生動物たちのはく製が展示してある。4年生の児童の自宅には、親子づれのサルが訪問し、家族で子ザルの成長を楽しみに見守っている。このように、野生動物が見られる常磐南学区である。

 まず、子供たちに野生動物を見つけた体験を出し合わせ、「もっと野生動物を見つけて友達になろう」と投げかけた。子供たちは、学校や登下校の途中で、家の近くでと、野生動物を見つけようと追究に向けて動き出した。校内に展示してあるはく製や、掲示物、学区の人からの聞き取り調査などを手がかりに、学区で見られる野生動物を調べた。また、東公園の動物センターのサルの飼育員さんや獣医さんに来ていただき、動物保護の立場から大切にしたいことを学んだ。追究していく中で野生動物が生きていくためには、えさとなる生物の存在や豊かな自然環境などの必然性にも気付いていった。 

 また、本学区では10年ほど前からサルやイノシシによる獣害が増えてきている。通学路に突然イノシシが飛び出て来て、児童に危害を加えるのではないかという心配も出てきている。そこで、学区の人からイノシシやサルによって作物を荒らされている実態と対応策について聞き取り調査を行ったり、農業を行っている方たちにアンケートをしたりして調べた。学区の若い人が減り、山の手入れが十分にできなくなり、野生動物がどんどん人里へおりてきて、田畑の仕事をしている高齢者の方たちを困らせているということがわかった。 

 しかし、獣害に対する思いは人間側の視点に立ったもので、動物の置かれた状況についての考えに及んでいない。そこで、野生動物の実態と学区の人の困り感をもとに人間と動物の両方の立場に立って、それぞれが生きていくための言い分を考え、共生の在り方を探る授業を実践した。それぞれの言い分を満たし、共に生きていく方法はとても難しいが、今後も追究を深めていきたい。そして、自分たちから学区の人へ伝えたいことや、自分たちの力でできることは何かを考えて、小さなことから実践をしたり、ちらしや看板で伝えたりする活動を予定している。