~地域の魅力を再発見~

 

 学区に流れる広田川は、豊かな水をたたえている。また、川を囲むように広がる水田は、昔から人々に大切にされてきた六ツ美南部学区の文化である。水田で収穫された米は、大正天皇即位の際の大嘗祭にも使用された。こうした豊かな自然と文化を背景にし、111年の歩みを進めてきたのが本校である。

 本校の5年生は、2年時の町探検、3年時の地域の学習を通して、学区には川が流れ水田が広がっていることを知っている。しかし、実際にそれらを肌で感じる経験をしたことのある児童は少なく、自然や文化を学区の魅力として感じている児童はあまりいなかった。地域の魅力ある自然や文化に繰り返し触れることでその良さや素晴らしさを感じられるだろう、また、その良さを守り大切にする人たちと関わる中で、地域に対する考えを深められるだろうと考え、本単元を設定した。

 活動の導入には横断的カリキュラムとして、社会科で稲作について触れた。自分たちの周りにも水田があると答える児童や、祖父が学区で稲作をしていると答える児童がいた。しかし、稲を育てていないとき水田はどうなっているのか、農家の人たちは何をしているのかと問うと、自信を持って答えられる児童はいなかった。「稲を育てていないとき水田はどうなっているのだろう。農家の人たちはどうしているのだろう」という疑問もち、水田へ行き様子を観察した。水田の観察はできたが、農家の人のことはまだわからなかったため、米農家の人に話を聞く会を設けた。これらの活動を通して、自分も田植えをしてみたいという思いが高まっていった。

 田植えをした後も、何度か観察へ行った。観察は、行うたびに新たな発見があり、子供たちにとってとても新鮮だったようである。観察を行った後には、観察で集めた情報を整理する時間を設けた。付箋紙を2色用意し、分かったことと疑問に思ったことに分けて書き出して仲間分けをし、自分たちが分かったこと、まだ追究が必要なことを明確にしていった。ここで見つかったった疑問を、次の活動の課題に設定して夏休みを迎えた。夏休み前までの活動をふり返ると、米作りには田植え以外にも多くの作業があり、自分が想像していたよりはるかに大変だと感じる児童が多くいた。稲を育てることの大変さを知り、お米を大切に味わって食べたいと考える児童もいた。

 10月になり、稲穂も頭を垂れるようになると、子供たちから稲刈りはいつするのかという質問が出た。その質問をきっかけにし、後期の活動を進めていった。稲刈りを終えた後、藁の活用を考える中で、地域の方に教わりながら、藁打ちの会と縄ないの会を行った。米をとった後の藁も大切に活用することを知ると、無駄なものをださないところに米作りの良さや素晴らしさを感じた児童もいたようである。

 今後、「餅つき会」や「感謝の会」を行いながら、まとめの時期に入っていく。ここまでに感じた米作りの楽しさや良さ、すばらしさと、米作りを続けている地域のすばらしさを、誰に・どのように伝えるかを考えさせたい。相手意識をはっきりさせる中で、どのような伝え方が効果的かを考えさせながら、学習のまとめを行っていく予定である。活動が終わるころ、学区に対する子供たちの思いが、少しでも深まっていることを期待している。

   

報告者:六ツ美南部小学校 加藤 浩先生