~フード・ロスを減らそう~

 

1 はじめに
 本学級の児童は、給食が苦手である。好きなものは何度もお替りするものの苦手な食べ物が出ると極端に減らしたり、給食の時間が終わるまで箸をつけずにいて食缶に戻す児童がとても多い。その結果、用意された食材すべてがなくなる日はとても少ない状態が1学期の前半まで続いた。
 総合的な学習の時間に本校3年生は例年「食」について学習をしてきている。地域にある牧場で育てている乳牛を学校に貸していただき、酪農体験学習を実施する。これによって、牛乳を生産する農家の努力と苦労を実感することで、命をきちんといただくことを学ぶ学習である。本年度も、酪農家の協力を得て、乳牛の世話をする予定であった。しかし、乳牛だけでなく、より広い視野に立って食糧を粗末にせず、きちんと食べきれる子供たちにしたいと願い、本実践を行うことにした。
2 実践
 給食は一人分の量を元にして学級人数分届けられている。1学期に東部給食センターが主催する栄養士の話を直接聞く機会があった。大きなひしゃくを使って大勢の給食を用意することや、一人分の栄養価を考え作られていることなどを聞くことで、残したら失礼であるという意識が芽生えた。その結果、給食をすべて食べきる回数が増えた。


 2学期になり、暑さの影響もあってか、食事量が減る傾向が見られた。食べ残しの出る日が続いたことを受け、総合的な学習の時間と学級活動の時間に、世界的に問題となりつつある食糧事情について調べる活動を展開した。
 子供たちはインターネットを使って、砂漠化が深刻化することで、畑作面積が減少傾向にあること、発展途上国では、商品価値の高い作物を輸出する割合が高くなり、現地の人の口に届く量が減っていること、紛争などの影響によって、飢餓状態に陥っている地域があることなどを知った。
 知っただけでなく、各自がポスターとしてまとめることで、各々の「食」に対する意識を高めることができると考え、ソフト「キューブ・キッズ」を使用して、ポスターにまとめることにした。


 資料1は、砂漠が拡大している図を検索した子供゜のポスターである。アフリカ大陸、赤道周辺の地域で砂漠化が広がっていることに着目し、「日本は砂漠化になっていないけれど」という一言の中に、将来的な危惧が含まれていることがわかる。


 資料2は、「輸入してまで食べ残す」と外国の方に言われないように、しっかりと食べきることを主張している。
 最後の「皆さんは、フード・ロスをやめてくれますか・・・・。」の問いかけに、この児童が食に対して真剣に考えることができたことが 表れている。このポスターを見た学級の子供たちも、「真剣に食べるようにしたいと思う」と共感することができた。
 その後、給食の時間では、どうしても食べきれない友達の分まで頑張って食べる子や、飯びつに残っているご飯をおにぎりにして食べる子供たちの姿が多く見られるようになった。口々に「フード・ロスになるよ、もっと食べて」と友達に協力を呼びかける姿も多くみられるようになり、完食できる日が12日間も継続した期間があった。

3 終わりに
 3学期になり、仔牛を学校で預かる予定だったが、牧場側の都合によって実施できなくなった。子供たちは当然がっかりした様子だったが、縁がなかったと諭すことで承知してくれた。実際に酪農家の仕事を体験することで、食に関する意識を高めるという年度初めの計画だったが、結果的には、上にも書いたように計画倒れとなってしまった。
 仔牛の飼育体験だけで本年度の学習計画を立てて実践していたとしたら、何の学びもないまま1年が終わってしまうところだったが、調べ学習をしておいたことが功を奏した。ポスターの制作を通して各自が食について真剣に考えることができたからである。今年の経緯から、本校の総合的な学習の時間の指導計画を見直す必要があることも分かった。
 「きらいなニンジンを頑張って食べていたら、前よりもたくさんふつうに食べれるようになりました」という日記を書いてきた児童もいる。その保護者からも「家でもずっと食べるようになりました」と喜びの声も届いている。
 毎日、当たり前のように口にし、平気で食べ残していた子供たちが、頑張って食べ切ろうと思えるようになったことは大きな成果である。給食においてフード・ロスがないのが当たり前となる日が近々やってくることを確信している。

報告者:豊富小学校 平岩浩二先生