おもちゃ名人になって,はっけんしたことを伝えよう -本宿小2年-

【単元のねらい】

  • おもちゃ作りを通し、名人や友達と楽しく関わることができる。(関心・意欲・態度)
  • おもちゃ作り報告書を作り、自分の考えを伝えることができる。(思考・表現)
  • 身の回りのものを利用し、動いたり音が出たりするおもちゃを作って遊ぶことを通し、動いたり音が出たりする面白さ、不思議さ、自分や友達の工夫のよいところに気付くことができる。(気付き)

【実践の様子】

 子供たちは遊ぶことが大好きです。一方、身の回りには、どんどん進化していくゲームや、情報機器などがあふれ、既製品のおもちゃで遊ぶことにも慣れています。ゴムをかけた割り箸をねじって、ゴムが戻る力で割り箸が動いて走るコトコト車を手作りして見せると、子供たちは珍しそうに目を輝かせました。車を走らせようとしたところ、「動くのかな」と興味をもって見にきました。実際に走らせてみると、歓声があがり、「わたしも作りたい」「これから作れるのかな」と、意欲的に生活科の授業に取り組みました。

 まずは、みんなで同じコトコト車作りをして、動く車の仕組みを研究しました。材料を配ると、喜んで作り始めました。「どうしてダンボールとストローとゴムで動くんだろう」という声があがりました。「たぶん、このゴムがあるからじゃないかな」と、気付いた子が話し出し、子供同士で思考を深める姿が見られました。「このビーズは必要なの」という疑問は、ビーズなしの車を走らせてみることで比較し、ビーズがないと全体のねじれがとれるだけでうまく割り箸が回らないという気付きが生まれました。うまく動かない子の車と、自分の車を見比べて、子供同士で試行錯誤し、全員が動く車を作りました。みんなで走らせてみると、「もっと速いのを作りたい」「オリジナルの車を作りたい」という思いが生まれました。そこで、どんな車を作りたいかを考え、自分オリジナルの「コトコト車」を作ることにしました。

 「速く走る車がいい」「遠くまで走ってほしい」「ゆっくり動くのがいい」「くるくる回るおもしろいのがいい」というそれぞれの願いをもち、どんな材料が必要かを考えて作り始めました。しかし、車体をダンボールからペットボトルに変えたオリジナルのコトコト車を作るには、ペットボトルに穴をあけたり、ゴムを通して作り直したりすることが子供たちの力では難しいことがわかりました。子供たちの中からも、「コトコト車は、先生の力が想像以上に必要で自分で作れない」「工夫して作り直すことが難しいから、何か違う車を作れないかな」という意見が出てきました。そこで、コトコト車から変更し、発射台のゴムを車体のでっぱりにかけて引くだけの「ジェットカー」というものがあることを紹介しました。すると、「それだと、私たちにも作れそう」ということで、ジェットカー作りに変更しました。コトコト車と同じように、材料を渡すとうれしそうに作り始め、みんなで気付いたことを伝え合いながら動く車を作りました。

 「自分だけの車を作りたい」という願いから、ジェットカーもオリジナルを作ることにしました。A児は、「このゴムを変えてみたらスピードがかわったよ」とグループの友達に伝えました。どう変わったのかを教師が問いかけると、「太いゴムにしてみたら、もっと速くなったよ」とグループの友達に変わった内容を教えることができました。すると、「すごい、ゴムの太さを変えたらスピードが変わるね」とグループの子も気付き始め、そのグループ全員が太いゴムを使ってコトコト車を作っていました。

 また、あるグループでは、タイヤの数に目をつけました。「車の真ん中にもう一つタイヤをつけると、安定するよ」と、自分の作ったジェットカーをみんなに披露しました。安定させることで、さらにスピードが出ることに気付いたのです。

「おもちゃ作り報告書」にも自分の言葉で、ゴムやタイヤのことについてまとめることができました。グループごとの活動を取り入れることで、関わり合いを通して気付きが広がり、さらに新しい発見をしていくことがわかりました。

 ジェットカーを完成させると、「他にもおもちゃを作りたい」という声が聞こえてきました。そこで、学級で7つのグループに分かれて作ることにしました。「空気砲」「ほかけ車」「紙トンボ」「怪獣スピーカー」「ゴムロケット」「魚釣り」「楽器」です。自分たちで必要な材料を考えて、作りました。より楽しいおもちゃにしようとどんどん工夫が表れてきました。ゴムロケットを選択したB児は、ジェットカーのことを思い出し、「ジェットカー」と同じように、太いゴムを使うと速くなりそう」ということに気付きました。気付いたことを、グループ活動で「伝えること」の大切さを改めて確認しました。

 おもちゃ大会でも、工夫したところに着目して楽しんで遊ぶことができました。

 この学習を踏まえ、子供たちは、手作りおもちゃの遊び方やおもちゃの作り方を1年生に伝えるために、グループごとにわかりやすくするために言葉を付け足しています。おもちゃまつりが楽しみです。

 

☆内容項目(6)「自然や物を使った遊び」だけでなく(8)「伝え合い」(9)の「自分自身の成長」も意識した単元目標になっています。ゴムをかけた割り箸をねじって、ゴムが戻る力で割り箸が動いて走るコトコト車を手作りして見せる教師の働きかけにより、子供たちが生き生きと活動を始めた様子がうかがえます。子供が夢中になれる対象との出会いをいかに教師が演出するかがポイントです。「どうしてダンボールとストローとゴムで動くんだろう」「たぶん、このゴムがあるからじゃないかな」「太いゴムにしてみたら、もっと速くなったよ」という子供の言葉から夢中になって活動する中で友達と関わり合い、思考を深めていく様子が分かります。教師が問い返すことで、無自覚な気付きを自覚し、言語化することに成功しています。今後おもちゃまつりで1年生に教えることで、自分自身の気付きも深めていくことでしょう。(生活総合指導員)