ふるさとに愛着を持ち、地域を拓く児童の育成を目指す実践 -常磐南小2年-

-五感をはたらかせて調べる 「このまち大すき」の実践-

〈単元目標〉

  • 自分の町を探検し、さまざまな場所やもの、人に出会い、学区への愛着を深めることができる。
  • 諸感覚を働かせ、色々な道具を活用して、学区のことを詳しく調べようとする。
  • 自分の好きな場所や人、心に残った出来事を友達や地域の人に発表することができる。

 

〈実践の様子〉

(1)お気に入り場所の探検

 1回目の探検は、児童のお気に入りの場所に行った。1回目の探検では、「どんぐりがあった」、「S君の家があった」、「秘密基地が見られてよかった」といった、見た様子に関する発表内容が多くあった。2回目以降の探検に際しては、探検して発見したことや見つけたこと、自分のお気に入りの場所などを、誰かに紹介するためのネタさがしをしようと呼びかけた。児童は、「ぼくは秘密基地を紹介する」、「いっぱい遊べるところを紹介する」と前向きの反応を見せた。

(2)わくわく探検計画

 1回目の探検では、視覚のみに頼った発見が多かった。そこで、「川を眺めていると、どんな音が聞こえましたか」とか、「どんな食べ物のにおいに似ていましたか」といった、諸感覚を個別に意識させる質問を投げかけ、見るだけでなく、聞く、かぐ、さわるといった諸感覚を使って調べることや、調べるためのさまざまな道具や方法を紹介して、調べ方を工夫してみようと提案した。さらに、近年学区に建設中の団地であるエコロタウンでは、工事の進み具合を見てみることと、既に住み始めてみえる方にインタビューをしてみることにした。そして、メモ帳、カメラ、ボイスレコーダー、スケッチブックを持って探検に出かけることにした。

(3)五感を使って

 1回目の探検では通り過ぎてしまっていた、道沿いの花や葉っぱ、木の実を詳しく観察した。どんぐりは以前に環境学習で勉強したことがあり、種類ごとに分類分けができる児童もいる。花のにおいをかいだり、はっぱなどの肌触りを感じたりした。川に着くと、注意深く生きものがいるかを観察した。夏にザリガニつりで来たときには、魚、カメ、ザリガニなどたくさんの種類の生きものがいたが、この日は、生きものはほとんど見られなかった。A児から、「夏にいた生きものはどこにいってしまったのだろう」というつぶやきが聞こえた。B児から、「川にはごみが全くないね、教科書の町探検のところには、ごみひろいしている人が出ていたけど、この川も誰かが掃除しているのかな」という声が聞かれた。地域の人の住みよい街にするための努力にも気付くことができた。

 石工場の見学では、石を切ったり、けずったりする機械や作品を見せていただいたり、考えてきた質問をしたりした。話を聞いていくうちに、学区にあるお墓や学校の石碑などはこの工場が作っているということが分かった。探検後のC児の作文には、「学校にある石の作品がここで作られているなんてびっくりした。学校と工場ってつながっていることが分かった」という感想が書かれていた。

(4)エコロタウン探検・インタビュー

 エコロタウン探検では、以前来たときよりもずいぶん工事が進んでいた。建設中の家もたくさんあり、大工さんが働いている。エコロタウンには、公園が3か所もあった。B児は、「3つもあるとたくさん遊べるね、子供がたくさん来るからかな」と言っていた。公園を通りかかると、お母さんと赤ちゃん、3歳ぐらいの子供が一緒にブランコをして遊んでいた。さっそくインタビューをすることにした。

 インタビューで、自然豊かな本学区の環境は、他の地域から見ると魅力的だと聞いて児童はうれしそうな顔を見せていた。また、お子さんが常磐南小学校に入学予定だと分かった。A児たちが6年生になるころに新1年生として入学してくるという。お母さんから、「入学したときにはよろしくね」という言葉をもらった。C児の感想には、「常南学区は自然がたくさんあって住みやすいと言っていた。エコロタウンを選んでくれてうれしい、もっとたくさん来てほしい。6年生になったらしっかりと面倒をみてあげたい」と書かれていた。

 本学区は自然が豊かであり、生き物や動物がたくさんいることが魅力の一つである。普段は子供たちはこうした環境をあたり前と感じており、学区の素晴らしさに気付くことができにくい。この探検やインタビューを通して、学区の自然の豊かさを再確認できたのでないだろうか。

(5)発見会をしよう

 探検発表を授業参観に実施して、保護者の方からも質問を受けたり感想を聞いたりすることができた。A児は発表について以下のような感想を書いている。

 わたしは、石工場について発表しました。発表はとても緊張しました。石工場見学で教えてもらったことを詳しく話すように心がけました。発表にむけて何回も練習してきたので、間違えずに言うことができました。発表では、写真を使って説明したり、クイズを作ったりしました。

 聞いている人が真剣に聞いてくれてうれしかったです。石工場について知ってもらえたらいいなと思いました。みんなの発表もちゃんと言えていてよかったなと思いました。発表が成功してうれしかったです。

 単元を終えて、D児は、「学区探検を通して、今まで知らなかったものをたくさん発見できた。探検に行ったとき、地域の人があいさつしてくれたり、話しかけてくれるのがうれしかった。前は話しかけられても何も言えないことが多かったけど、今はたくさんのお話ができるようになったと思う。これからもたくさんお話ししたいと思った。」という感想を書いている。

 学区探検を通して、地域の人たちは自分たちのことをあたたかく見守ってくれ、気にかけていてくれている。学区には、こうした親切な人たちがたくさんいることに気付き、関わりを持っていきたいという気持ちを高めることができた。探検が楽しかったという感想だけではなく、学区のよさや自分たちの成長にも気付くことができた。こうして本実践を終えることになった。


●諸感覚を使って繰り返し探検を行ったり、石工場で働く人に触れ合ったりする中で、子供たちが気付きを高めていったことが伝わってきます。単元を終えたD児の感想からは、探検を通して身に付けた自分の言語の力に関わる「自分への気付き」が高まる姿も感じられます。エコロタウンでのお母さんとの関わりから生まれたC児の思いは、まさに「地域を拓く」常南学区の持続可能な姿につながるものかもしれません。(生活・総合指導員)