見つけた秋でおもちゃを作り、保育園の子が楽しめるお店を開こう -井田小1年-

【単元のねらい】

  • 身近な秋の自然の中から、木の実や落ち葉などを集め、それらを使って楽しもうとする。(意欲・関心・態度)
  • 木の実や落ち葉などを使って、遊びを工夫したり、相手の立場に立って考えたりすることができるようにする。(思考・表現)
  • 秋見つけや木の実などを使った遊びを通し、友達や異年齢児と関わりながら活動する中で、自分の頑張りや友達の良さに気付くことができる。 (気付き)

 

【実践の様子】

 井田小学校の中には、緑の木々が多くある。運動場の南側には「井田ッキーの森」と呼ばれる緑地が広がっている。1学期に学校探検を行い、「井田ッキーの森」の存在を知った児童は、大喜びで休み時間になると出かけるようになった。秋になり、どんぐりが見つかるようになると、どんぐりをポケットにいっぱい拾ってくる児童が見られた。
 身の回りの自然の素晴らしさに気付いてほしいと学校中の秋を探しに行った。ただ探しに行くのではなく、「見る(色、形)」「触る(手触り)」などの諸感覚を使って「秋ビンゴ」を行った。ビンゴになると点数が付くため、児童は夢中で秋探しを始めた。さらに、探しに行くときには、透明な袋を持たせ、気に入ったものを入れてくるようにした。袋が透明なので、友達の集めたものの様子を見ることができる。負けじと拾い集めたり、見つけた場所を聞いたりする児童が見られた。その後、見つけた秋を紹介し合うために、教材提示機を使って発表した。

 教室に創作コーナーを設け、どんぐりやまつぼっくりといった秋の自然物を使って遊び始めた児童を紹介した。すると、他の児童も自分が探してきた秋の自然物を使ったおもちゃを作って遊んだり、友達が作ったおもちゃを借りて遊んだりするようになった。さらには、遊び方を教え合ったり、どんぐりごまで競争をしたり、マラカスで一緒に合奏したりする姿が見られるようになった。

 そして、同じおもちゃを作った児童の作品を並べ、どこが違うか、どういった点がよいか話し合った。どんぐりごまでは、「どんぐりの形」や「持ち手の長さ」「飾り」、マラカスでは、「中に入れた木の実の違い」「容器の違い」「中身の量」「飾り」、という工夫すべき点が出された。さらに、得点を付ける、ルールを工夫するといった工夫できそうな点が出され、自分のおもちゃを改良する児童が見られた。

 

 たっぷり秋と触れ合えたところで、「自分たちだけで楽しむのではもったいない」と話し、どうしたいか話し合った。「みんなに遊んでもらいたい」「だれかを招待したい」という意見が出たため、相手をだれにするか話し合った。その結果、「保育園の子が楽しめる、喜んでくれる、早く1年生になってこんなことがしたいと思ってくれるようなお店を開こう」ということになった。

 どんなお店がふさわしいか、何店舗開くのかを話し合い、グループ分けをした後に準備に入った。ある程度、店の準備が整ったところで、店役、見つけ隊(アドバイザー)に分かれて、リハーサルを行った。見つけた良いところともっと良くしたいところを出し合い、話し合った。「○○さんが、優しく声をかけていた」「○○くんがほめてくれてうれしかった」と友達の良さに気付く児童が出てきた。また、店役からは、「大きな声であいさつができた」「できていない子を手伝ってあげた」と自分の良さに気付く児童もいた。

 

 グループで改善点を話し合い、準備をして本番を迎えた。保育園の子と同じ目線で接したり、上手に作ることができない子を手伝ってあげたりする姿が見られた。また、普段は大変おとなしい児童が、一生懸命、園児に教えている姿も見られた。当日までに見つけ隊からもらったアドバイスを生かして、積極的に接客をしようとする児童が多かった。引率してきた保育園の先生から「保育園にいたときは、できる力があるのに、前に出て活動することや自分から行動することをほとんどしなかったのに、今日見たら、積極的に活動していて嬉しかった」と言われた児童もいた。

 保育園の子が帰るときには、正門まで全員が見送りに出て、笑顔で「また来てね」と挨拶をしていた。

 教室に戻ると、全員がやり切ったという満足感に満ちた表情をしていた。今までに、友達と協力をして計画や活動をしたことがあまりないこともあり、自分たちでやることができたという自信をもたせることができた。今後友達と関わりながら季節の変化を感じ、さらにお互いを認め合うことができるようになることを期待している。

☆教室の「創作コーナー」がいいですね。このように「環境を整える」ことは、対象への関心を高めたり、思考を促したりするための有効な手だてになります。創作コーナーで教え合い、試行錯誤をする姿が見られたことは、この手だての有効性を物語っています。また、同じおもちゃを並べたことにより、比較でき、子供たちはもっと工夫できそうな点に気付くことができました。「比較」も、気付きの質を高めるための有効な手だてです。その他、友達のよさを伝え合う場や保育園の子に教える場を設けて、自分自身への気付きを促したり、気付きを確かなものにしたりと、本実践の中には、たくさんの手だてが施されていますね。(生活・総合指導員)