ゲストティーチャーのお話を聴いて,野菜への愛着を深めよう -竜美丘小2年-

【単元のねらい】

  • 野菜の種類・育て方や育ち方の様子に関心をもち,親しんだり,野菜への思いや願いをもち,大切に育てたりしようとする。(関心・意欲・態度)
  • 栽培の仕方や,世話で困ったときの対処法を野菜の立場になって考えたり,調べたことをもとに世話の仕方を工夫したり,言葉や絵で表現したりすることができる。(思考・表現)
  • 野菜の特徴に合った世話の仕方があることに気付き,続けて世話をした結果,野菜を収穫できた喜びを味わうことができる。(気付き)

 

【実践の様子】

 5月中旬,子どもたちは自分が育てる野菜を決めて,お世話をする活動を始めました。「トマトが大好きだから,育てて食べたい」「大きなキュウリを収穫したい」等,子どもはそれぞれの思いや願いをもって,自分の育てる野菜を決めました。

 児童Aは,最初に決めていたトマトから,ピーマンに変更したいと申し出てきました。「どうして変えようと思ったの?」と尋ねると,「ピーマンが苦手だから,自分が育てたピーマンなら,食べられるようになるかも,と思ったから」と答えました。普段においても,漢字や計算など,苦手な教科に対して粘り強く取り組むことのできる児童Aらしい理由だと感じました。同じ野菜を育てるのにも,意欲のもち方にはその子なりの理由があり,その意欲を収穫までもち続けるための支援が必要だと思いました。

 お世話や観察を続け,6月に入ると,小さな実ができてきました。子どもたちは,実の大きさや数を調べるだけでなく,触ってみたり,匂いをかいだりと諸感覚を使って,野菜の成長について実感することができました。反面,実ができたことで安心してしまったり,自分の野菜になかなか実ができず焦ったりして,お世話が疎かになってしまう子も出てきました。そこで,自分の育てた野菜を収穫して食べる,という活動を再度思い起こさせ,これからのお世話への意欲を持続させるための手立てが必要だと考えました。そこで,野菜に対する愛着を深められるよう,自分の育てている野菜にはそれぞれの特徴があることに気付くとともに,野菜の特徴を栄養面から理解する活動を計画し,実践しました。

 実践にあたり,専門家のお話を聴くことが児童の理解をより深める手立てと考え,栄養教諭さんをゲストティーチャ―としてお招きすることにしました。最初に,お世話のときに気付いた,自分の育てている野菜の「すごいところ」を発表し,その後,野菜の栄養面での「すごいところ」を,栄養教諭さんから聴くという授業展開を計画し,実践しました。

 自分の見つけた,育てている野菜の「すごいところ」の聴き合いでは,「小さかった苗 が,たった1か月で支柱より大きくなった」「昨日より実が大きくなって,数も増えた」等,たくさんの気付きが発表されました。野菜の特徴に興味がもてたところで,栄養面からも関心が高まるよう,栄養教諭さんのお話を伺いました。栄養教諭さんは,子どもが視覚的に理解できるよう,また,それぞれの野菜の特徴が比較できるよう,図表を使って説明してくださいました。栄養面についてだけでなく,おいしく食べることのできる調理法についても紹介してくださいました。

 授業の振り返りでは,授業でわかったことや,これからがんばろうと思ったことをワークシートに記入しました。「ぼくの育てているきゅうりには,水がいっぱい入っていることをはじめてしりました。だから,あついときにはきゅうりをたくさんたべると,水分ほきゅうになって,からだをひやしてくれることがわかりました」「じぶんのやさい(トマト)は,かぜやがんをよぼうできるはたらきや,ろうかをふせぐこともできるときいて,びっくりました」と,子どもたちは,栄養教諭さんの話を聴いて,自分の野菜のすごさを改めて感じることができました。児童Aは,「ピーマンはにがてだけど,先生のお話をきいて,ピーマンは食べるとつかれをとってくれることがわかりました。きるとにがくなるから,きらずにまるごとりょうりするとにがくないとおしえてもらったから,がんばって,のこさずにたべたいとおもいます」と書くことができ,その後のお世話や観察にも,意欲的に取り組みました。


その後,自分の育てた野菜を各家庭で調理して食べました。振り返りには,「しごとで目がつかれているお父さんのために,なすのりょうりをつくってあげた」「じぶんでそだてたやさいだから,いままでよりおいしくかんじた」等の記述や,自分の育てている以外の野菜についても,調理した感想が書かれていました。野菜の特徴を様々な面から知ることで,興味・関心をもって学習活動に取り組むことができた実践でした。

 

☆食育との関連付けを図った、たいへん提案性のある実践と言えます。低学年の子供にとっては、食べることは一番の関心事。それを前面に出して実践を行ったことで、子供たちの栽培への意欲が持続しました。本実践の素晴らしい成果の一つでしょう。飼育・栽培単元では、長期にわたる飼育・栽培をすることが求められています。それは生命の大切さを実感できるようにするためです。せっかく、長期にわたる栽培をしても、世話がいい加減になって、枯らしてしまい、枯れても平気…なんてことになったら、長期にわたる栽培に意味がなくなります。竜美丘小学校の実践のように、子供の意欲が減退したときに、どのような手だてを講じるか。教師の腕の見せ所です。(生活・総合指導員)