思考スキル・ツールを活かして,思考力を深めよう -小豆坂小2年-

【単元のねらい】

  • 自分が育てたい野菜を決め,自分の野菜の成長に関心をもちながら世話をし,収穫しようとすることができる。(関心・意欲・態度)
  • 元気な野菜を育てるための栽培の仕方を調べ,世話で困ったときには,どうすればよいか考えたり,適した時期を考えて収穫したり,収穫した野菜の食べ方を考えたりすることができる。(思考・表現)
  • それぞれの野菜の特徴に違いがあることや,育てる野菜に合った世話の仕方があることに気付くことができる。(気付き)

 

【実践の様子】

 「自分の野菜を育てたい。」という思いを引き出すため,5月に愛知県立農業大学校を見学することにしました。農業大学の先生の案内のもと,トマトやナスの温室の見学をさせてもらい,育て方の工夫などの説明を受けました。子どもたちは熱心に話を聞きながらメモを取り,「これからどんな野菜を育てていこうかな。」という思いを強くもつことができました。

 

 子どもたちは,お家の人と相談したり,野菜の調理の仕方,世話の仕方,実のでき方,世話の難易度などを調べたりしながら,自分が育てる野菜を決定しました。野菜は,ミニトマト,きゅうり,ピーマン,ナス,オクラ,枝豆の中から選びました。子どもたちがそれぞれの野菜を選んだ理由は,「自分が好きな野菜だから。」「お父さんが好きな野菜だから。」「たくさん実ができるから。」などが挙げられていました。

 

 自分が育てる野菜が決定すると,野菜の苗を注文し,届いた苗を自分の鉢に植え替えました。植え替えの仕方は生活科の教科書や本で調べ,どの子も大事そうに植え替えることができました。

 

 植え替えが終わると,次の日から野菜のお世話が始まりました。「先生,水は毎日あげればいいの?」などの声があがったので,自分が育てる野菜のお世話の仕方を調べることにしました。1年生の時は,アサガオやチューリップなど,全員が同じ植物を育てていたので,全員そろって同じようにお世話すればよかったのですが,今回はいろいろな種類の野菜がそろっています。野菜の種類によってお世話の仕方が違うため,種類の違う人の真似をしてお世話をしていては,おいしい野菜ができなくなるかもしれないことを伝え,自分の野菜の世話の仕方を調べる時間をとりました。調べる方法は,本,野菜作りに詳しい人への聞き取り,インターネットなどを使って調べました。

 

 調べたことは,付箋に書き出し,くま手図を使っていろいろな観点別に整理できるようにしました。そして,同じ野菜の子供同士でグループを作り,自分が調べたことをもち寄って交流する場をもちました。Xチャートを用いて,水やり,支柱,肥料,その他の4つの観点で世話の仕方を分類しました。

 授業後の子どもたちの感想を見ると,「お世話をきちんとしないと,実や葉がかれてしまうかもしれないので,今日初めて知ったお世話もしながら,毎日お世話していきます。」「スーパーで売っているきゅうりはまっすぐだけど,水不足だと曲がったきゅうりになることを初めて知りました。実がなったら,水不足にならないよう,忘れずに水やりをしていきます。」など,今後の世話につながる内容が書かれていました。

 

 野菜については,お世話をしながら随時観察し,ワークシートに記録していきました。

 背丈,葉の数や形,大きさ,花の数,色などのポイントを押さえながら,具体的に変化の様子が分かるように記録するようにしています。「先生,花が咲いたよ。」「先生,もう実ができてきたよ。」「実が〇〇センチになったら,収穫するんだ。」など,日々,子どもたちからの報告があります。

 

 野菜の成長を記録しながら,最終的には収穫,調理へとつながりますが,その前に,学習してきた内容を使って「野菜クイズ」を作ることにしました。くま手図を使い,野菜の成長の様子やお世話の仕方,調理の仕方など,様々な項目ごとに整理し,その中から「野菜クイズ」に使えそうな内容を吟味していきます。現在は,この材料を集めているところです。

 

今回の学習で使用している思考ツール(スキル)は,くま手図(多面的に見る),ベン図(比べる),Xチャート(分ける),ランキング(並べる),ピラミッドチャート(選ぶ),ウェビングマップ(選ぶ),マトリックス(比べる)などを使っています。他者と学び考えながら子どもが思考を深めていけるよう,取り組んでいきたいと思います。

 

☆朝,自分の野菜の水遣りに向かう子供たちを見ていると,まずは自分の鉢に直行しています。2年生という発達段階だと,自分の野菜でなければ興味がないということが分かります。だから,どの学校でも一人一鉢で栽培をしています。もちろん,友達の野菜に実ができると一緒に喜んであげたりしますが,やっぱり自分の野菜が一番!小豆坂小学校では,昇降口の近くにずらっと鉢を並べ,朝と帰りに野菜のお世話ができるようにして,関わりを深めていけるようにしています。ずらっと並んでいると,自分の野菜に水遣りをした後,友達の野菜も無意識に見ます。そして,自分の野菜と比べます。比べると,自分の野菜との違いや共通点に気付きます。そこに,思考が働きます。小豆坂小学校では,思考ツールを使って思考を視覚化し,思考を深めようとしています。考えることが大好きな子供に育っています。今後も,どのように思考が深まったのかを見取っていきたいですね。