諸感覚を使って、お気に入りを伝えよう -山中小1年-
諸感覚を使って,お気に入りを伝えよう -山中小1年-
【単元のねらい】
- 学校の施設に興味をもち,行ってみたい教室や会いたい人など,自分なりのめあてをもって繰り返し探検に出かけようとする。(関心・意欲・態度)
- 誰に何を伝えるかを考え,伝えたいことを選ぶことができる。(思考・表現)
- 学校には,いろいろな仕事があり,みんなのために働いている人がいることに気付くことができる。(気付き)
【実践の様子】
4月,入学したばかりの子どもたちは,初めての環境・仲間に出会い,学校生活を楽しくスタートさせました。
入学式の翌日,教師の引率による学校探検に出かけました。初めて見る教室,物,人々を,子どもたちは興味津々でじっと見ていました。
学年・学級での仲良し会をして,友達と仲良くなった子どもたちと共に,もう一度学校探検に出かけました。「班長さんが勉強していたよ」「図書室には,いっぱい本があったよ」など,ますます興味をもちました。
もっと探検に行きたいという思いをもった子どもたちに,二人組で探検に出かけることを提案しました。子どもたちは,探検に向けて,グループの名前を決めたり,目印の旗を作ったり,意欲的に準備に取り組みました。
約束事を確認し,校舎,校庭の見取り図を持って,二人組での探検に出かけました。探検した教室にすごいなと思ったものがあったら,カードに印をつけていきました。
探検中,「7つ見付けたよ」など,たくさん印をつけてきた子どもたちですが,見付けたものを伝え合う場では,うまく友達に伝わらないこともありました。
児童Aは,図工室で見付けた電動のこぎり機を友達に紹介しました。名前が分からないので,形や大きさ,色など,言葉で伝えるだけでなく,身振り手振りも交えて一生懸命伝えようとしていました。しかし,子どもたちにとって身近なものではないため,伝わりませんでした。児童Aの発表を聞いた子どもたちは「もう一度,探検に行きたい」「絵を描けばいい」といった思いをもちました。そこで,今度は,絵が描けるカードをもって探検に出かけました。
次の学校探検には,すごいなと思ったものを描く紙「発見ぶっく」を持って出かけました。子どもたちは,見付けたものを絵や字で「発見ぶっく」に描き,それを使って発表しました。様々な教室の中にあるものを見付けてきました。同じものを見付けたと発表する子もいました。
保健室にあるトロフィーを見付けた3人の子どもの絵を並べて見せたところ,「同じじゃない」「形が違う」「色も違う」といったつぶやきが聞かれました。そこで,「いろ」「かたち」などを意識しながら,いちばん気に入ったものを描いて,みんなに紹介しようと提案しました。今回は,一人一人がこだわりを生かせるように,個別で探検に出かけました。
お気に入りのものをみんなに紹介する場では,絵を見せながら,場所,選んだ理由を発表しました。絵を見たり発表を聞いたりして,質問がある場合は,発表者にたずねました。児童Bは,校長室に掲示されている全校児童の顔写真を紹介しました。質問に対して,「校長先生や先生たちが,顔を忘れないためにあります」「お客さんが来たときに,こういう人がいるよと教えるためです」など,校長先生に聞いて教えてもらったことを,みんなに伝えることができました。「紹介名人」を決めた後,「どんなところがよく分かったのか」と問い返すと,「色が上手だから」「形が同じだから」など,目でよく見て描くとうまく伝わることに気付くことができました。また,疑問に思ったことを人に尋ねることのよさにも気付くことができました。
この学習を踏まえ,子どもたちは,隣のクラスの子に伝えるために,諸感覚を意識してもう一度探検に出かけ,カードに付け足しをしています。隣のクラスとの発表会が楽しみです。
☆現在,子どもたちは5回目の探検中です。繰り返し活動する場を設定しているところがいいですね。しかも、ただ、繰り返し探検しているわけでなく、意図的に表現活動を仕組んでいるところがすばらしいです。表現活動とは、例えば、探検で見つけたことの交流です。体験活動と表現活動の相互作用によって、学びの質が高まると言われています。山中小学校は、生活科の内容(1)「学校と生活」と内容(8)「生活や出来事の交流」を関連付けた単元計画を立て、この交流の場を充実させています。言葉や絵によって、見つけたことを伝える中で、自分の気付きを自覚したり、振り返ったりすることができます。自分と友達の気付きを比べる中で、共通点や相違点に気付くことができます。その結果、新たな視点をもって、次の探検に向かうことができます。子供たちは、山中小学校のよさをたくさん見つけ、学校が大好きになることでしょう。(生活科指導員)