授業力アップセミナー基礎編
授業力・教師力アップセミナー基礎編
H.22 8.4 ぬかた会館
<日程>
○開講式
○授業実践報告
○パネルディスカッション
○野田敦敬先生のご講話
○閉講式
<授業実践報告>
1.「昔の遊びを通して、子供の気付きを広げ、深めていく実践」
― 1年「めざせ、あそびめいじん」の実践を通して ―
大門小学校 鶴田 秀幸 教諭
9月の祖父母参観の日に、「おじいさん・おばあさん・おうちのかたたちとむかしのあそびをしよう」を行ったことをきっかけにして、発展性のある「こま・お手玉・けん玉」にしぼって一人一人がうまくなりたい遊びを決め、取り組んでいった。
子供たちとの話し合いで「めいじんへのみち」(約束事)を決めたり、2年生に教室に来てもらって技を見せてもらったり、小さなステップとして「プチ名人」として冠に貼れるシールがもらえるようにしたりして、意欲を持続させていった。
グループごとに技を見合う時間を設けたり、気付いた「こつ」を学習カードに書いたものを「名人技ボード」に貼って、子供たちがお互いに見合うことができるようにしたりといった手立ても講じられた。
最後にクラス全体で技を発表し合った後の、学習の振り返りの話し合いでは、「土・日など休みの日も練習しました。」「○○君に、ゆっくりのもしかめを教えてもらいました。」「廊下に貼ってあるこつを見つけた紙を見たらできるようになったよ。」といった、認め合い教え合う中で、気付きが自分自身のものへと高まっていったことが感じられた。
2.「かかわりの中で主体的に学び続け、気付きを共有できる子の育成」
― 2年「おいでよ! わくわく・にこにこ・おもちゃまつり!」の実践を通して ―
井田小学校 石黒 智康 教諭
2年生の子たちは、1学期の間に交流学級である1年生のクラスとの交流会を5回持った。1対1のペアを決めて活動を行う中で、親密さも深まり、相手意識も高まっていった。
2学期に入り、国語科の教科書教材「おもちゃまつりへようこそ!」を生かし、時間をかけて作りたいものを作った後、友達のおもちゃでも遊べる時間を持った。子供たちは、自分が作ったものと比べることによって、自分のおもちゃを見直したりすることができた。教師は子供たちと1対1の対話をしながら、児童の思いや考えを十分に見取り、気付きの質を高めていった。
1年生を呼んでおもちゃまつりをすることを計画する中で、事前に「発表者」「1年生役」「チェック係」に分かれ、発表を行い、話し合った。「ぼくには的が遠くて届かない。1年生には難しいかな。」「点数を小さくしたら、計算しやすいのかな。」というように、1年生の立場に立った発言が多く聞かれた。
おもちゃまつりを終え、「1年生がにこにこ顔だったから、わたしもうれしかった。」「みんなの前で発表できてよかった。」というような、成就感や自分自身への気付きの高まりが感じられた。
<パネルディスカッション>
○ 質疑応答
鶴田先生に対して、違う遊び同士の交流の様子や「プチ名人」と「名人」の違いについての質問など、石黒先生に対して、「対話」の時間の作り方や計画の中で1年生を「おもちゃまつり」に呼ぶことを決めた時期についての質問などが積極的に出され、2人から詳しい答えが得られた。
○ パネラーから
荻野部長先生より、個々の気付きが、みんなの感動とともに共有したものに変わっていること、評価するというのは、歩みを振り返ることと考えればいいのではないかということ、「先生自身がはまって」実践されたところがよかったということなどの助言がされた。
<野田敦敬先生のご講話>
○ 授業実践報告について
鶴田先生のような伝承遊びは、今回の改訂で、内容(5)の「季節の変化と生活」に入った。地域の方との交流という意味では、内容(8)の「生活や出来事の交流」とも言える。交流することがイベントになってしまってはいけない。活動が行き詰ってしまったときや盛り上げたいとき、成果を見てもらいたいときに交流できるとよい。
石黒先生のおもちゃ遊びと「科学的な見方・考え方」との関係は、低学年の児童が既に持っている素朴な見方・考え方が、問題解決的な活動を通じて得られた知識となり、それが「科学的な見方・考え方の基礎」である。それが、3年生からの理科の中で、観察・実験を通して少しずつ実証性を持ち客観的なものになっていく。
○ 評価の課題と展望
アンケートからも、算数の「知識・理解」の比べ、生活科の「気付き」が評価しにくいことが分かる。気付きは3つの段階に分けて考えられる。まず対象そのものへの気付き(例えばアサガオの葉・花・形・数など)、次に対象と自分とのかかわり(アサガオに水をあげたら元気になった等。)そして、自分自身への気付き(水やりを続けることができた自分)である。気付きを質的に高めるためには、単元構成や支援を工夫したり、丁寧に見取ったりすることが必要である。
「表現」の評価は、作品やカードの出来栄えではない。低学年では思考と表現が一体化しているので、「思考」を素直な「表現」から見取ることが大切である。例えば、アサガオのつるの成長に合わせて支柱を立てていたり、暑い日や荒天の日に鉢を動かしていたりすることも、「表現」と考えてもよい。
「態度」とは「授業態度」ではない。「おもしろそう」と興味がわき、「やってみよう」と関心を持ち、「できるまでがんばろう」と意欲が高まり、そして「これからも続けよう」と活動が日常的に実践化されるときに「態度」が身についたと言える。だから、他の単元・他教科・休み時間・学校外での活動にも目を向けて評価する必要がある。
アンケートより(抜粋)
○授業実践報告について
1.鶴田秀幸先生の実践
- 最終目的である「遊び名人」に向けて、「プチ名人」というスモールステップを用意することで、子供たちが最後まで飽きることなく興味を持って練習に取り組めたと思う。
- プチ名人や名人技の冠にシールを貼る活動は、子供の意欲をより高めるよい手段だと思った。「こつ」の共有化で、全員が学びの質を向上させている。
- カードをいつでも見られるようにしたことは、他の児童の考えを深めていける手立てだと感じた。取り入れていきたい。
- 同様の実践を行ったことがあるが、名人の技のレベルが高く驚いた。児童同士や他学年とのかかわりにもつながっていて、参考になった。
- 子供たちにとって昔の遊び(伝承遊び)をする機会はどんどん減っているので、本実践はとても意義があると思う。
- 今の子供たちは、昔遊びを保育園でやったという子が多くおり、幼保小のかかわりも必要だと思った。理科・社会につながる教科だからこそ、入学前の実態を関連付けて実践していく必要があるのかもしれない。
- すばらしい実践で勉強になった。遊びを通して「他者とのつながり」を広げたり、遊び方を工夫するなどの「思考」を深めたり、自身の「集中力」を高めたりと、「人間力」を高める実践だと思った。
2.石黒智康先生の実践
- 子供同士のかかわりがよく見えた実践だった。板書記録や対話など丁寧にされていて、ぜひやってみようと思った。
- 個人との対話にはすごく時間がかかるという話があったが、ワークシートへの朱書きや加筆というやり方なら、個々の子供へのかかわりとしてまねしたいと思った。
- 先生との対話を「対決」と児童に話していて、とても高度な思考の訓練ができていると思った。石黒先生のクラスの子たちは幸せであろう。
- 評価しにくい生活科。紙面に表れない対話を大切にすることの意義を学んだ。時間にゆとりが必要である。
- 「おもちゃまつり」の前に3チーム(発表する子・1年生役の子・チェックする子)に分けて、互いに気付いたことを話し合ってから「おもちゃまつり」に臨んだので、成功したと思う。「おもちゃまつり」の様子をもっと見たかった。
- おもちゃ作りを通して、子供たちの科学的思考を高め、他教科と関連させ進めていく実践が聞けて参考になった。
- 国語の教科書と関連させて実践を行っていたことがすごい。一人一人との対話を行ったということで、生活科の授業を通して子供と教師の信頼関係を築いていかれたのがすばらしかった。
○パネルディスカッションについて
- たくさんの質問が出て、自分では気付かなかったことを深く知ることができた。
- 質問でもあったように、低学年は思っていることを文章にすることができない児童が多いため、対話を大切にしなければならないということを改めて思った。
- 実践の裏話を聞くことができてよかった。具体的なことがよく分かった。
- 教師自身も学びに熱中し、楽しんでいくことがよい効果を生むことが分かった。
- パネラーの紹介やディスカッションのテーマがあるとよかった。
- 質疑応答がほとんどであった。発表者だけでなく、全体に振ってもよかった。
- 野田先生の話の後で行ってもよかったのでは。質疑も含めて、部長先生や野田先生のお話も聞きたかった。
○野田敦敬 愛知教育大学教授のご講話について
- 最新の情報を、生活科に限らず教えていただけたのは、とてもありがたかった。
- 評価という難しい内容だったが、具体的に示していただき分かりやすかった。
- 対象への気付き、他者への気付き、気付きにも様々なものがあることを知った。評価への詳しい資料があり、大変勉強になった。
- 子供の絵の見取り方についてのお話が、大変勉強になった。1年生担任だが、文字も言葉もたどたどしく、その子の学びや成長をどう見取ればよいのか分からず悩んでいた。絵から子供の思いを見取ることができると分かり、今後(生活科以外でも)の参考になった。
- いつもワークシートに書いてあることで気付きや意欲を評価してしまっていたので、書ける子は3つの観点すべてAということが多かった。今度から、文字や絵に表れない子供の内面や気付きも評価に取り入れられるようにしたい。
- 様々な場面での子供の様子をしっかり見取っていくためにも、どんな姿が見られるとよいのか、前もって考えておかなければならないと思った。
- 生活科の評価は他の教科とちがい、境が見えず分かりにくいと感じた。しかし今日のお話を聞いて、子供のそのままの姿を見ていけばよいのだということが分かった。
- いつもとても分かりやすくて、勉強になる。移行期のこと、来年度の本格実施に向けた内容、とてもありがたかった。2学期からの実践につなげたい。また、来年度の評価の観点が、頭の中で整理された。