走れ、走れ、車のおもちゃ けんきゅうじょ -大門小2年-

【単元のねらい】

  • 身近な材料を利用して、動くおもちゃを作ったり改良したりしながら、友達と競い合い、楽しく遊ぶことができる。(関心・意欲・態度)
  • 試したり、比べたりすることを繰り返しながら、自分や友達の作ったもののよさや工夫について表現したり、伝えたりすることができる。(思考・表現)
  • おもちゃの面白さや不思議さに気付くとともに、自分や友達のおもちゃの作り方や遊び方の工夫に気付くことができる。(気付き)

 

【実践の様子】

 11月はじめに、「先生のおもちゃランドで遊ぼう」と題して、教師が作った4種類の動く車のおもちゃで遊びました。動力は風(帆)、おもり、ゴム、磁石の4種類。車がどうして動くのか、意見交流した後、それぞれの車で遊びました。車の特徴やおもしろさを発表し合い、みんなで「帆かけ車」を作り、速く走るようにどんどん工夫して改造し、速さ比べをすることに決めました。

 

 車作りに必要な材料を、家庭で集めてきた子どもたち。身近な材料を使い、帆かけ車を作り始めました。先生のアドバイスは一切なし。車軸を針金で作る子、車軸を直接本体に固定してしまってタイヤが回らない子、帆が倒れて進まない子など、「走らない車」になってしまって、困ってしまった子がたくさんいました。

 そこで、困ったことを解決するために学級で作戦会議を開きました。走るためにはタイヤが回らなければならず、回るためには、「すき間」が必要なこと、帆は、竹串やテープで支えをすると倒れないこと、車軸は形が変わらない竹串がいいことなど、「走る車」にするためのヒントがたくさん発表できました。

 

 作戦会議で得たヒントを基に、もう一度作った車は全員が「走る車」になり、大満足。今度は「もっと速く走る車にしよう」をめあてに、作っては試走し、困ったら友達にアドバイスをしてもらい、改良を繰り返しながらもう一度試走をするという活動を行いました。制作は4回にも及びました。廊下に800㎝のめもりを引き、個人で「5秒でどこまで進むか」を自由に測れるようにしたことで、休み時間にも夢中で改良をする子も。また、5人ずつでレースをし、速かった子の車を展示して見せてもらう場もつくりました。子どもたち同士で競い合う楽しさ、工夫して作る楽しさを味わいながら、夢中になって取り組んでいました。

 

 それぞれが見つけた「速く走る車のひみつ」を、クラスで発表しました。帆の大きさ、本体の重さ、タイヤの回り具合、あおぎ方など、たくさんのひみつを共有した子どもたち。その後、「友達の工夫を自分の車にとり入れよう」をめあてに、最後の改良を行いました。会議で出た、「風が逃げないように、お椀型の帆にするとよい」という意見を受けて、紙コップやゼリーカップを取り付けたり、「本体は軽くて小さい方がいい」という意見を受けて、豆腐パックや小さいプラスチック容器を使ったりと、思い思いに工夫をしました。

 

 最終改良がおわった「スペシャルカー」を手に、音楽室に引いた10mの特設めもりを使って、5秒でどこまで進むかレースを行いました。友達が必死に車を走らせている姿に、応援する方も力が入ります。

 振り返りでは、最初に測った記録と、最後の記録を見比べました。子どもたちは速くなったことを喜んだり、「○○君に勝ちたくてたくさん工夫できて楽しかった」と発表したり、「△△さんに、速く走る工夫を教えてもらって嬉しかった」とカードに書いたりしていました。速くするために諦めずに何回も工夫ができたこと、友達と教え合いができたことなどを喜ぶ姿がたくさん見られました。家に帰って、家族と遊びたいという子もいました。クラスの子それぞれが、自分のがんばりや成長を感じることができました。

 

☆まず教師が作った車を見せて、子供たちに「わたしも作りたい」と思わせたところがすばらしいですね。さらに、教師が教えることをせずに、子供たちに試行錯誤する場と時間を保障したことが、子供たちの追究意欲を高めることになりました。低学年の子供は「自分の」車を作りたいし、速くしたいのです。そのために試行錯誤します。その過程で、子供たちは速く走る工夫を重ねていきます。うまくいかない子供には、友達のアドバイスを聞く機会を設けたり、教師が対話によってきっかけを与えたりすることが有効です。大門小学校の2年生の子供たちは、体験の中で「風が逃げないように」工夫することや「本体は軽い方がよい」ということに気付いていきました。低学年では、このような、目に見えないものの働きが見えてくるような遊びをたくさん経験させたいものです。