気付きの質を高める手立て

  • 生きものの活動の変化に気付かせるために、観察の時間を確保したり、 自由に発表できる雰囲気を作ったりする。

 1学期に、教師が、雨上がりの校庭から1匹のカタツムリを教室に持ち込みました。子供たちから、「どこで見つけたの?」、「雨が降った後に、よくカタツムリがいるよ。」、「ぼくも、捕まえたいな。」、など、いろいろな言葉がでて、ここから単元が始まりました。しかし、カタツムリを苦手とする子供も少なくありませんでした。そこで、大すきな子供たちには、カタツムリについて知っていることや見つけたことを広めてもらおう、苦手とする子供には、同じ生きものとしての愛着がもてるようになってほしいと単元を構想することにしました。カタツムリの住む環境を本やインターネットで調べ、一人一つずつ飼育ケースに砂や落ち葉、木切れを入れ、棲家を作りました。そして、子供たちは個々に、校庭で、カタツムリがいそうな湿った場所から見つけてきました。

 カタツムリは、夜行性であることや、常に観察することで些細な動きも見つけられると考え、飼育ケースを毎日家に持ち帰ることにしました。学校と家での観察を通して、多くの気付きが得られたようです。「夜になると、すごくよく動いていたよ。」、「特に上のふたに上がってくるんだよ。」、「上がってきたから、手で砂のところにおいても、またすぐに上にあがってくるんだよ。」、 「上の方が、すきなんだね。」とみんな同じような体験をしているので、自分の観察したこと、感じたことをつなげて発表することができました。また、「這っていくときは、中で何かが動いているみたいだった。」、 「ずっと見ていたら動いた後に、ねばねばしたものがついていたよ。」 など、時間をかけて観察していることが分かりました。

 

 その後、観察して見つけたことを発表し合う時間を設けました。「にんじんを食べたら、オレンジ色のうんこがでたよ。」、「ぼくのは、きゅうりを食べたら、きみどり色のうんこだったよ。」と食べた物の色がうんこの色になることに気付いていた子供たちがいました。それを聞いていたA男が、「きゅうりの皮は残して、真ん中だけ食べてるよ。」と飼育ケースからきゅうりを出し、みんなに見せました。それを聞いてB男は、「ぼくのは、食べてあるよ。」と違いがあることを伝えました。「どうしてなんだろう。」というC子のつぶやきから、きゅうりを食べているカタツムリの観察を学級全体ですることになりました。子供たちは、野菜や葉っぱを食べるカタツムリの口の動きに意識して観察することができ、きゅうりの皮を食べないカタツムリが多いことが判明しました。「柔らかい所の方が液で溶かして食べやすいのかもしれない」という子供たちならでは考えをまとめました。共感したり、ちょっとした違いを確かめ合ったりすることで、さらなる気付きへとつなげることができました。

 

●カタツムリという身近な生き物に着眼したところがよいですね。学級全員が同じように飼育すると、みんなと比較しながら自分のカタツムリについて気付いていけるよさがありますね。繰り返しかかわらせたこと、話し合いで自由に発表できる雰囲気を作ったことで先生のねらいとする「カタツムリへの愛着」をもたせられ「生き物の命」について学んでいくこともできたのではないでしょうか。気付きの質を高める要素である「比べる」「たとえる」「見つける」もおさえられていますね。何をみつけさせたいのか、何を気付かせるのかを教師側がもちつつ、子供たちの素朴な疑問や思い、願いを汲み取っていくことで質の高い気付きを導くことができると考えます。ところで、カタツムリは本当にやわらかいところのほうが食べやすいから皮を食べなかったのでしょうか・・・?(生活・総合指導員)