発見・工夫しておもちゃを作ろう -福岡小2年-

【単元のねらい】

  • 友達と関わり合いながら身近なものを使ったおもちゃを作って楽しく遊ぶことができる。(関心・意欲・態度)
  • 友達と教え合ったり比べたりしながら工夫しておもちゃを作り、自分の考えを伝えることができる。(思考・表現)
  • 作ったおもちゃで遊ぶことを通して、面白さや不思議さに気付き、おもちゃの創意工夫によって以前よりもできるように なった自分を実感することができる。(気付き)

【実践の様子】

〈単元計画〉(12時間完了)

学習課題・学習内容

  1. いろいろなおもちゃを作って遊んでみよう。(第1、2、3時)
  2. 風の力を使ったおもちゃで遊ぼう。(第4時)
  3. もっと遠くへ進む帆かけ車を作ろう。(第5時)
  4. 帆かけ車の報告書を書いて工夫したことを教え合おう。(第6時)
  5. ゴムの力を使ったおもちゃで遊ぼう。(第7時)
  6. ゴムの使い方を工夫してペットボトル弓矢をもっと遠くへ飛ばそう。(第8時)
  7. ペットボトル弓矢の報告書を書いて工夫したことを教え合おう。(第9時)
  8. おもちゃ教室に1年生を招待しよう。(第10、11、12時+国語4)

 

ゴムの使い方を工夫してペットボトル弓矢をもっと遠くへ飛ばそう(第8時)

 

 前時ではペットボトル弓矢を作った。その時に書いた報告書を確認、発表させたところ「次はもっと飛ぶように工夫したい。」「次は違うゴムに変えたい。」といった意見があがった。そこで、「社長から指令書を預かっています。」と教師が指令書を出し読み上げた。「目当ては、『いろいろなゴムの使い方を試して、矢をもっと遠くへ飛ばそう』だ。」と教師が伝えたところ、子供たちは自分たちの思いと課題が同じだったので笑顔になった。さらに、教師が「社長がいろいろなゴムを用意してくれたよ。」と伝えたので、早く試してみたいと意欲が高まった。

 活動が始まった。ゴムは6種類、数も十分に準備してあったので、子供たちはゴムの種類を変えながら、何度も飛ばすことができた。修理コーナーが用意してあり、弓が壊れても慌てることなく落ち着いて自分で修理をすることができた。5メートルごとにカラーテープを床に貼った。15メートルからは1メートルごとにカラーテープで距離が表示してあり、子供たちは矢がどれだけ飛んだかがすぐに分かった。

 児童Aは最初に太くて長いゴムを手にしたがやめて、長いゴムを弓に付けて試した。10メートルほど飛んだ。次に太くて長いゴムを手にしたがつけられなくてやめた。長いゴムは15メートル、ちょっと長いゴムは15メートル、ちょっと太いゴムは20メートル飛んだ。このように次々とゴムの種類を変えながら、友達と「勝負しよう。」「どのくらい飛んだ。」と楽しそうに何度も試す姿が見られた。

 活動の途中で、子供たちを集めてどんなことを試したかを発表させる場を設けた。(資料1)児童Aは発表を聞いた後ちょっと長いゴムを手に取り2重にした。児童Hの意見を聞いて、試したことのないゴムを2重にするというやり方に興味をもったようだ。ゴムを2重にして引っ張ることに苦戦していたが、思っていた以上に飛んだようだ。「わあ26メートルぐらいじゃん。」と思わず叫んでいた。その後はゴム3重にも挑戦した。

 最後に子供たちを集めて、2回目の発表の場を設けた。そこで、児童Aは「ゴムを3重にしたら、飛行機みたいに飛んだ。」と手のひらを動かして弓が飛ぶ様子を表現しながら発表した。本時では、児童Aは、ゴムを2重にするという友達の意見を取り入れることで、飛距離を伸ばすことができた。気付きを深めることができたといえる。そして、ゴムで飛ぶ弓矢のおもしろさや不思議さを味わいながら、できるようになった自分を実感することができた本時であったことと思う。

 本単元では、子供たちはおもちゃ作りを楽しみながらもっと作りたいと意欲を継続させていった。積極的に学びに向かっていく手立てとして、「ふくおかっ子おもちゃカンパニー」の社員になっておもちゃの開発を行うという設定にした。そして、課題を「社長からの指令」と伝え、解決すると「課長、部長」といった具合に昇進するという設定をつくることで子供たちの意欲や関心を刺激していった。学びのプロセスとしては、まず身近なもので作るおもしろさや自然の不思議さに気付けるように、全員同じ条件でおもちゃを作り楽しく遊ぶ体験をさせた。次にうまくいったことやうまくいかなかったことを遊びの中で体験し、気付きへとつなげるために、「飛距離を伸ばす」といった発展的な課題を与え、課題解決に向けて風やゴムの活用を工夫させた報告書を作る活動を行った。単元を通して、工夫しながらおもちゃを改善させることを繰り返すことで、気付きを深めていくことができたと思う。

 単元の終わりには、子供たちは国語科「おもちゃ教室」と関連させながら1年生を招待して遊ぶ場を設ける。これまでの自分の発見や工夫を生かしながら、1年生が楽しむことのできるおもちゃを作る姿を期待したい。さらに本単元で取り上げた風とゴムがものを動かすことは3年生の理科で学習することから、本単元の実感や気付き中学年以降の学習でより科学的な思考に結び付くことを期待している。


☆「ふくおかっ子おもちゃカンパニー」の社員になって社長からの指令を実行するという設定がすてきです。「がんばるぞ」という子供たちの思いが膨らむ様子が見てとれます。「ペットボトル弓矢」というペットボトルと太さの違うストロー、輪ゴムを使う教材を見つけ出されました。この教材によってゴムの力で遠くまで飛ばす楽しさを存分に味わうことができました。子供たち一人一人に保護眼鏡も用意し、広い体育館で、いろいろな種類のゴムや修理するための道具をそろえて活動されました。これらの環境を整えることで子供たちは思う存分試行錯誤し、友達と比べながら思考を深めることができました。十分に自分たちが楽しんだ経験は、「1年生のために」と1年生が楽しむことができるおもちゃ作りにも生かされてくるでしょう。そして、やがては3学年の理科でもこの経験が生かされてきます。子供が夢中になって学べるすてきな活動になりました。(生活科指導員)