大きくなあれ ぼく・わたしの やさいたち -美合小2年-

【単元のねらい】

  • 野菜の成長やその変化,生命の尊さなどに関心や愛着をもって世話をしようとする。(関心・意欲・態度)
  • 自分が育てている野菜の変化について考え,絵や文などに表現することができる。(思考・表現)
  • 自分の野菜の栽培を通して,野菜の成長や野菜を育てることができた自分自身の成長に気付くことができる。(気付き)

 

【実践の様子】

   子どもたちは,1年生の時にアサガオを育てており,2年生では実のできる野菜の栽培に挑戦できることを楽しみにしている様子がうかがえた。そして,この意欲を原動力とし,5月の初めに,どんな野菜を育てたいかを考える場をもった。それぞれの子どもたちが育てたい野菜の苗を家族とともに買いに行くところから栽培活動を始めた。そして,苗を自分たちの鉢に植え替えるときに,「今日からみんなは野菜のお父さん,お母さんだね」と話した。野菜の親という設定を作ることで,栽培活動を継続的に行える意欲付けを行った。さらに,それぞれの野菜に名前を付けることで野菜への愛着を高めていった。トマトの栽培に挑戦したA児は,甘くなってほしいという思いと自分の名前を合わせて「あまと」と名付けた。A児は「あまとが大きくなったよ」と毎日のように報告に来るようになった。

 そして,国語科の「たんぽぽ」の授業で葉や茎,花のひみつについて学習してきたことを生かし,野菜でも葉や茎,花のひみつについてそれぞれ観察を行い,それぞれの部分での気付きを高めていった。観察の視点を絞ったことで,B児はトマトの茎に細かな毛が生えていることに気付き,毛は虫除けの効果があることを本で調べることができていた。

 本学級では,毎週水曜日に「野菜の誕生曜日会」として野菜の成長を報告しあった。「誕生曜日」とは,一週間を一年に見立てて野菜のお父さんお母さんである子どもたちが我が子である野菜の成長を祝う日とした。毎週,誕生曜日までに「野菜ツイッター」に野菜の成長に関するつぶやきを書き込むようにした。ツイッターとはいっても,デジタルなものではなく,小さな用紙に自分の思いを書き込み掲示していくアナログなものを用意した。子どもたちは,ピンクの用紙にはうれしかったこと,緑の用紙には発見したこと,青の用紙には困ったことを書き自分の場所にどんどん掲示していった。誕生曜日会ではそこに書いたことをもとに,祝いたいことをそれぞれ発表し,同じ野菜についての気付きの共有や違う野菜の成長についての理解を深めることができた。

 「野菜ツイッター」で困ったことを示す青い紙が増えてきたタイミングで困りごとを相談する「野菜会議」を行った。この野菜会議では,「葉の色が黄色になったこと」や「花が取れてしまったこと」など子どもの困りごとがたくさん出てきた。そして,その困りごとに対してほかの子どもたちからアドバイスや自分の経験についての発表が次々と出てきた。C児は「野菜に虫が付いている」と困りごとを発表し,そのC児に対して,「虫は葉を食べるから退治した方がいい」「虫も生きているから草むらに逃がした方がいい」など様々な意見が出された。そのアドバイスを受けて,野菜についていた虫を落ちていた枝でそっと取り,草むらに逃がしているC児の姿が見られた。

 6月も下旬に近づき,半数以上の子どもが1回目の収穫を終えることができた。そして,学期末の懇談会で野菜を家に持ち帰ってしまうため,最後の「誕生曜日会」に友達の野菜との「お別れ会」を子どもの発案で行うことになった。「お別れ会」は,野菜の栽培と成長を振り返る活動でもある。そこで,子どもから出た「どうやって野菜が大きくなったかを確かめたい」という意見を取り上げるようにした。

 「お別れ会」では,野菜の成長についての気付きが多く出された。「毎日水やりを頑張った」という頑張った自分への気付きはあるものの,「自分が水やりを頑張ったから野菜が大きくなった」といった自分の頑張りと野菜の成長を結びつける発言には至らなかった。そこで,「みんなが水やりを頑張ったから野菜たちが大きくなったんだね」という気付きを,自覚させる言葉がけを行った。その後に野菜から自分へのメッセージを書かせたところD児は「私を植えてくれてありがとう。毎日水をあげてくれてありがとう」と書いており,野菜からの言葉を通して自己の頑張りに気付いている記述が見られた。

 この「大きくなあれ ぼく・わたしの やさいたち」の単元を通し,花から実ができることなどの野菜の成長に気付くとともに,野菜を育てることができた自分自身の成長に気付くことができた。今後も子どもたちの意欲を大切にし,実践を進めていきたい。

 

☆子どもたちが,野菜のお父さんお母さんになることで,我が子のように愛情を注ぎ,野菜の栽培活動ができた様子がうかがえます。子どもが対象への愛着をもつことは,主体的な活動につながっていきます。かわいい我が子の誕生日を祝うように「誕生曜日」を決めたり,「野菜ツイッター」を行ったりと子どもたちが継続して野菜に関われる手立てが有効に働いています。「虫がついているから,気付いた人はどんどん取っていってください」という教師主導の栽培活動ではなく,子どもたちの困り感を見取って行う「野菜会議」で解決をしていく単元の組み方が主体的な学びを連続させています。野菜会議での話し合いはまさに対話的な活動といえます。野菜から自分へのメッセージを書かせる活動は,野菜の視点を通して自分自身の成長に気付くことができ,深い学びとなりました。(生活科指導員)