どうして井田ッキーの森は人気があるのか,考えよう -井田小1年-

【単元のねらい】

  • 自分の大好きな場所や人ができ,学校に対する愛着をもとうとする。(関心・意欲・態度)
  • 探検で見つけたことの中からお気に入りを選び,友達に分かりやすく伝えたり,よさについて考えたりすることができる。(思考・表現)
  • 学校の施設に関心をもち,それぞれの施設の特徴に気付くことができる。(気付き)

 

【実践の様子】

 入学してまだ間もない4月。異学年交流の一環として2年生と学校探検に出かけた1年生の子供たちは,初めて見る学校の施設に感動の連続でした。「体育館に行くまでの廊下に本がたくさんある場所があったよ。すごい。」「マイクのある部屋があったよ。何に使うんだろうね。」など探検後口々に発言する子供たちは,「学校の中にある部屋やもの」にとても関心をもったようでした。

 それから数日後,休み時間を利用して,自分たちで探検を行う子供たちは,校舎内だけでなく,校舎外の施設にも目を向けはじめました。

 本校の運動場の奥には,「井田ッキーの森」という場所があります。1年生から6年生までの多くの子供たちが,休み時間に足を運び,思い思いに過ごすことができます。

 その場所で,同級生だけでなく,上級生と触れ合った子供たちは,「カブトムシの幼虫がいるんだって。」「秘密基地をつくったよ。」と休み時間にあった出来事を連日報告しに来ました。その後,「校舎内だけじゃなくて,校舎の外,井田ッキーの森が楽しそう。いろんなものがありそうだよ。」と子供たちから意見が出始めました。そこで「井田ッキーの森で何が見つかるか,探検してみる?」と提案しました。すると子供たちは,群れで咲いている黄色いしょうぶの花や,カブトムシの幼虫がいると言われている“落ち葉のトランポリン”に興味をもちました。そして,しょうぶの花のにおいをかいでみたり,カブトムシの幼虫を探したりするために,トランポリン内の腐葉土を掘り返したりするなど,全員が井田ッキーの森に関心をもって活動に取り組むことができました。

 その後も,繰り返し井田ッキーの森に足を運び,井田ッキーの森で見つけたことを学級内で発表しました。何があったか共有していくと「また探検に行きたい。」「みんなが見つけたことを地図にしたいな。」という意見が出ました。そこで,井田ッキーの森の簡単な地図を用意しました。子供たちは,自分たちが見つけたものを地図にたくさん貼り付け,子供たちが作成した“井田ッキーの森の地図”が完成しました。完成した地図を見た子供たちは「地図にたくさん見つけたものが貼れたね。」「でも,これだと何がどこにあるのか分かりにくいよ。」「いっぱいありすぎだよ。」と意見を述べました。すると,「そうだよね。いっぱいありすぎて,何が何だか分からないよね。じゃあ,例えば,誰かに『井田ッキーの森ってこんな素敵なものがあるよ』と伝えたいことを考えて,自分のお気に入りを一つ選んでみようか。」と提案しました。

 子供Aは,井田ッキーの森が好きそうな様子でしたが,絵や言葉にするのが難しいと感じているようでした。最初の探検では緑で塗りつぶされた大きな楕円の真ん中に黒いものがいる絵を描いてきました。「これは何を見つけたのかな。」と問いかけると「葉っぱにいた毛虫だよ。」と言いました。次の探検でも「何が見つかったかなあ…。」と悩んでいたので,「先生と一緒にいた時に何か見なかったかな。」と問いかけましたが,なかなかカードに書くことができませんでした。そこで,探検時に教師が撮影していた写真を時系列ごとに見せていくと「クロアゲハがいたね。写真見せて。」と言ってクロアゲハの絵を描くことができました。「クロアゲハどうだったかな。」と聞くと「とても足が速かった。捕まえるのは難しそうだと思った。」と答え,記録することができました。その後,地図づくりを経てお気に入りとして「落ち葉のトランポリン」を選んだ子供Aは,自分から「落ち葉のトランポリン」の絵を描き「たのしかったし,うれしかった」と自分の思いを書くことができました。

 井田ッキーの森の一番のお気に入りを発表する場を設定すると「蜜の花が好きです。甘いから」「サクランボの実がお気に入りです。ぷにぷにしているから。」と理由を示しながら見つけたものを,発表することができました。子供が実際にサツキの蜜を吸っている写真や見つけたサクランボの実の実物を提示すると,聞いている子供も興味をもって発表を聞くことができました。

 ここで,自分の一番のお気に入りを見つけた子供たちが「井田ッキーの森のよさ」についてさらに考えることができるように,「どうして井田ッキーの森がこんなに人気があるのか」と問いかける場を設定しました。虫に興味がある子供Bは,友達が見つけたたくさんのお気に入りから,「虫がいたり,落ち葉のトランポリンで幼虫を探したり,いろんな遊びができる。それが井田ッキーの森だよ。いろんな思い出を作りたいから人気があるんじゃないかな。」と自分のことだけじゃなく,多くの友達や上級生がなぜ井田ッキーの森で遊ぶのか考えることができました。子供たち全員で,「みんなのお気に入りがたくさんあるから,井田ッキーの森は人気がある。」と確認し,子供たちに,今後どうしていきたいか問いかけました。「井田ッキーの森にまた探検に行きたい。」「見つけたことをお母さんに伝えたい。」という意見が出てきました。

 この学習を踏まえ,自分たちが大好きな井田ッキーの森のよさを伝えたい人に伝える活動に向かいます。これからは,季節ごとに移り変わる井田ッキーの森の変化を子供たちと共に楽しめる授業を展開します。


☆「また探検に行きたい」「みんなが見つけたことを地図にしたいな」という子供の思いや願いを大切にして活動を行ってきたことが分かります。何度も繰り返し井田ッキーの森と関わることで,花のにおいを嗅いだり(嗅覚),腐葉土を掘り起こしたり(触覚),サツキの蜜を吸ったり(味覚)しながら,井田ッキーの森への愛着を深めていったことが伝わります。その場,その場の子供の気付きは自覚されないまま忘れ去られることがあります。教師との対話で無自覚な気付きを自覚化させることは大変価値があります。今後も,対話を繰り返すことで季節ごとに移り変わる井田ッキーの森の変化に目を向け,活動を楽しみながら気付きを深めていけることでしょう。  (生活科指導員)