7月22日(木) 密集飼育

 本校では今までの幼虫の飼育は、孵化直後は平バットで、1ヶ月ほどして飼育ケースで育ててきました。中に入れる底材など、研究すべき点は多くありますが、特に問題なのが孵化直後の幼虫の飼育方法です。今までは、A4サイズほどの平バットに、200匹ずつの幼虫を入れ、幼虫の大きさに合わせたカワニナの稚貝を与えてきました。孵化直後は1~2ミリの極小の稚貝が必要です。昨年は稚貝が大量だったので問題なかったのですが、今年は極小の稚貝があまり採集できなくて、3ミリほどの稚貝も与えなければなりませんでした。少し大きな稚貝はホタルの幼虫から逃げるために水面に浮いてしまうので、ホタルの幼虫が十分なエサを食べることができていないかもしれません。

 

 

 

 そこで思い出したのが、以前、学区で幼虫を飼育されていた丸山さんのお話を伺ったときの話です。幼虫を密集飼育して、エサは少し大きめなカワニナの稚貝を砕いて与えていたとのことでした。極小ではなく少し大きめな数ミリのカワニナの稚貝なら楽に多数採集できます。ただ、カワニナを砕いて与えると、カワニナの肉汁などが流れてしまうので水が汚れてしまうの、水替えが必要になります。しかし、孵化直後の小さな幼虫の飼育ケースの水替えは大変です。慎重に行なわないと、小さな幼虫を流してしまいます。そこで活用したのが、神戸山手大学の吉岡英二氏の論文に載っていた、ナイロンメッシュを貼ったタッパーを使う飼育方法です。本校では、飼育小屋と校舎内で2種類の密集飼育を試してみることにしました。

 飼育小屋で行なっている密集飼育の方法です。

①縦15cm横20cm高さ15cmほどのタッパーに、ナイロンメッシュを、底と側面に貼りました。接着剤は、吉岡氏の論文にあったように、シリコンシーラントを使いました。最初、水通しが良いようにと思い、♯80のメッシュを貼ったら孵化直後の幼虫が外に出てしまったので、♯200のメッシュを貼ったタッパーを作り直すことになってしまいました。網目の細かさは重要でした。

 

 

 

②ナイロンメッシュを貼ったタッパーを飼育ケースに入れ、タッパーの中に通常飼育の2.5倍の500匹の幼虫を入れました。幼虫の隠れ家が必要なので、平たい竹炭も入れました。今年は、このケースを4個準備し、2000匹を密集飼育することにしました。

 

 

 

 

③給水は、貯めた沢の水を水中ポンプでくみ上げてパイプとホースで各飼育ケースに水を入れていきます。今は、1日2回、各15分間の給水で、数リットルの水が入ります。飼育ケースには排水口が開いているので、あふれた分はオーバーフロします。給水時以外も、エアーストーンによる水流がナイロンメッシュを通過してタッパーの中を流れていくので、タッパーの中の環境は良好に保たれます。

 

 

 

④エサのカワニナは、今のところほぼ毎日与えています。数ミリのの稚貝を5匹ほどです。ピンセットで殻を砕き、場所が偏らないように置くように心がけています。

 

 

 

 

⑤夕方頃から、隠れていた幼虫が出てきた、カワニナの群がります。大体一晩で食べ尽くされますが、食べ残しは翌日取り除きます。前日の夕方に与えた殻を砕いたカワニナは、翌日の朝には腐敗を始め、異臭がします。自動給水と酸素豊富な水の循環で水環境は良好だと思われますが、食べ残しが多いときは、水替えをします。タッパーごと幼虫を取り出し、飼育ケースの水を入れ替え、タッパーを元に戻します。手間もかからず、幼虫への負担も少ない方法だと思います。

 

 

 

ときどき、竹炭に隠れている幼虫の様子を見ると、丸々と育っているようです。見た目では、通常飼育と大差はなさそうです。新しい飼育方法として期待できそうです。