授業力・教師力アップセミナー基礎編
授業力・教師力アップセミナー基礎編
H24.8.2 ぬかた会館
<日程>
○開講式
○授業実践報告
○加納誠司先生のご講話
○閉講式
<授業実践報告>
1.「自然に親しみ、いきいきと学ぶ子の育成」
―1年「もりとなかよし」(6月)自然や人と繰り返しかかわり、表現力をつける授業―
城南小学校 平國 亮子 教諭
校内にある「ふるさとの森」を教材化し、自然への愛着を深める活動を通して、子どもがその感動や発見を自分の言葉で表出したり、伝え合いながら気付きを広げたり深めたりする力を培う、1年生6月の実践である。
何度でも森に入り、視点を決めて観察や活動をした。記録カードは、絵を大きく、文字は少なくし、自分で学びを振り返ることができるようにした。体験と表現の繰り返しをし、思いの表出がなかなかできない子には、対話をしながら、思いを引き出すようにした。森が苦手な子も、繰り返し関わることで、森での活動に慣れてきた。
諸感覚を使って探検や観察をした後、自分の「お気に入り」を決めた。お気に入りは、その後、ツアーと称して、対象物への思いを友達に紹介しながら、森めぐりをした。
友達の紹介を聞いた後で、紹介の中から、気に入ったものを「いいね」として選ばせた。「お気に入り」や「いいね」を記録するカードは、自分の思いを抵抗なく自信をもって、表出できるようにしておいた。選んだ理由も書くようにした。そして、「いいね」発表会を持ちながら、「お気に入り」や「いいね」を「森マップ」に落としていった。
「お気に入り」を紹介し合ったり、「いいね」を選んだりして、思いを交流する場を設定したことで、新たな発見があり、気付きが広がったり、深まったりする場になった。「お気に入り」や「いいね」を「森マップ」に落としていくことで、森のよさをさらに感じることができた。
2.「自然の素晴らしさを実感し、気づきの質を高める子の育成」
―2年「目ざせ!お米作り名人」の実践を通して―
三島小学校 二村 帆波 教諭
直接的な体験が少ない子どもたちに、自然と継続的に触れ合い、観察していく活動を通して、感性を豊かにし、物事を見つける目を育んでいくことをねらいとして、実践を行った。
長期に渡って取り組んでいく単元なので、米作りへの意欲を高め、意識が持続していくように、3年生から籾をもらう引き継ぎ式を行った。代々引き継がれてきたお米作りの重みを感じ、次は自分たちが挑戦しようという意欲が高まった。
米作りに取り組む過程で、米作り名人を招いて籾まきを行ったり、保護者の方の支援を受けながら田植えをしたりするなど、様々な人と交流することで、感謝する心をもつことができた。
「芽出し日記」「お米日記」といった観察記録を書く時間を多く設定することで、稲の成長に気付くだけでなく、稲の周りの生き物にも目をむけることができた。諸感覚を働かせて観察できるように視点を示した。
学校田の草取りや田起こし、しろかき、鳥よけ作り、脱穀、籾摺りと、子どもが主体的に栽培活動に取り組んだ。鳥よけ作りでは、話し合いで出た意見を基に、自分で工夫して作成することができた。脱穀、籾摺りでは、いろいろな方法を考え、体験することができた。自分たちの手で稲を育てたという充実感を味わうことができた。
<アンケートより(抜粋)>
○ 授業実践報告について
1.平國 亮子先生の実践
- 諸感覚を使って「なんのにおい!?」「なんのおと?なんのこえ?」を記録させるカードや「いいね」の共感したことを書くカードの工夫を今後の授業の参考にしたい。
- 「お気に入りツアー」のアイデアがすごいと思った。すごく盛り上がりそう。マイクを持って自信満々にしている様子がとてもよいと思った。
- 1年生ということで、子どもの文による表現が未熟な中、書かせることを限定することで子どもの視野が広がっていることが分かり、ワークシートを工夫していきたいと思った。また、自分の思いを友達と関わって表現したり、森マップに表したりと、自分の意見が認められる活動がたくさんあった。
- 何度も繰り返し森へ行く点、これは、とにかく子どもが喜ぶ。そして、視点を与えておくことで学びが深まる。子どもが伸び伸びと育っていく本実践を真似してみたい。
- 教材になるものを見極める目とそれを教材化する先生の考えが素晴らしく、教材を見つけ活用できる目と力をつけたいと感じた。
- にこにこマークで、自分の本時の取り組みがどうだったかを振り返られる点がよかった。大発見をさせることが自分ならではの気付きになるので、参考にしたい。
- 振り返りの大切さがよく分かった。子どもたちが意欲をもつような教師の言葉がけ「大発見」「いいね」を今後活用したい。また、子どもの変容が分かるような記録をとり、子どもが自分自身への気付きに結び付けられるようにするとよいと感じた。
2.二村 帆波先生の実践
- 長期的な実践なので、子どもたちの意欲・関心を引き出し続ける工夫がとても多く、勉強になった。周りの人との交流を深め、学びが深まっていったのがよく分かった。
- 低学年の子どもを長期間にわたって継続観察させる方法、保護者、名人との交流のさせ方、ダイナミックな授業の進め方を今後の参考にしたい。
- 学校の水田で稲を育てるだけでなく、一人一人が自分の稲を育てることで愛着をもって活動できたと思う。祖父母や名人との関わりもあり、地域との結びつきも深められたと思う。
- 体験と人との交流、ESDを念頭においた実践だと思った。自分の米を長い時間をかけて育てることが、子どもの学習への意欲を高めるのだろうと思った。
- 子どもが稲にいた虫に気付き、その虫について調べたり、友達の意見を参考にしながら自分で虫よけを作ったり、脱穀の仕方を考えたりと、子どもが自主的に米作りに取り組む様子が素晴らしいと感じた。
- 稲の成長への気付きだけに留まらず、3年生から受け継いだことへの責任感、お米パーティーで1年生に喜んでもらったという経験など、長い時間稲の世話を続けたことに大きな達成感をもてる素晴らしい授業だと思った。
- 継続性のある、さらには虫や稲刈りの時期など、その都度調べてみる活動はとても意義あることだと実感した。また、本やインターネットだけではなく、人との関わり、つまり直接質問して学んでいくという方法は素晴らしいと思った。家庭と連絡を取り合って協力していただくという実践を、自分も実行してみるつもりだ。
○ 加納 誠司 中部学院大学准教授のご講話について
- 生活科という学習の大切さ、また、どのような観点を重視していけばよいのかを教えていただいた。よい表現活動のためには、よい体験活動をすることが大切ということを教えていただいたので、今後の実践では、とにかく活動の時間を保障していきたい。
- 体験を何度もする大切さを教えられた。何も言わなくても自分で見つけたり考えたりすることで、質の高い気付きが生まれたり、思考が深められたりすることが多いという話であった。これからの授業で何度も体験や活動をさせていこうと思った。
- 指導要領の内容や、どんなことがポイントになるのかを分かりやすく教えていただいた。また、気付きの質を高めるということも事例を加えて丁寧に教えていただき、大変勉強になった。本年度初めて生活科の授業をやってみて、不安な部分がすっきりした。
- 表現力を養うためには、諸感覚を養うことが大切だと教えていただき、そのとおりだと気付かされた。
- 子どもが「やってみたい」と思う授業が、子どもの学習意欲や思考力を伸ばしていくことを気付かせてもらった。子どもがのめり込んでいくような授業作りをしていきたい。
- 他者との交流から自分の良さに気付く。そして、振り返ることでさらに自分の良さに気付き、積み重ねられる。じっくり一つの対象と関わることがいかに大切かを実感した。