道徳の時間は,「自己を見つめる時間」といえます。自己を見つめることを通して,これからよりよく生きようとする道徳的な価値感を高める時間です。例えば「嘘をついてはいけない」ということは,頭ではわかっています。そのことについて自分の考えを確かめ,まわりの人間はどう考えているかを踏まえ,自分のとらえ方はどうなのかを振り返る時間にしたいものです。この過程が「道徳的価値の自覚を深める」ことになります。この時間は,学校教育全体で取り組む道徳教育のかなめになります。だから,道徳の時間は年間35時間(小学校1年生は34時間)実施して初めて機能する時間なのです。さらに,以下のことに留意します。

①  計画的,発展的に指導する

   例えば「思いやりの心を育てる」ことは大切です。しかし,特定の価値ばかりを取り上げるのではありません。また,「廊下を走る子が多いから規則尊重を指導する」といった問題解決的な発想でもありません。学習指導要領に示された道徳的価値を,子供の発達段階に即して,計画的,発展的に指導します。市や学校で作成された年間指導計画を参考にします。

②  学校全体で行う道徳教育を補充,深化,統合する

   特別活動や総合的な学習で学習する内容を,道徳の時間で指導するのではありません。道徳の時間以外で学習した道徳的諸価値を,自分の生活や生き方全体に広げてとらえなおし,自分のものとして発展させていこうとするのが道徳の時間です。

③  道徳的実践力を育成する

 道徳的実践力とは,人間としてよりよく生きていく力です。主として,道徳的心情,道徳的判断力,道徳的実践意欲と態度を包括するものです。実践力は実践の基盤となります。