技術・家庭部 研究主題
令和6年度 研究概要
|
1 研究の方向
令和3年度より完全実施となった学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」という言葉が使われている。この「主体的・対話的で深い学び」は、まったく新しい概念というわけではない。これを実現させるために、これまでの授業をすべて変える必要はなく、これまで取り組まれてきた授業改善や授業研究から生まれたさまざまな教育実践に、「主体的・対話的で深い学び」の視点が反映されてきたと考えるべきである。
また、技術・家庭科の目標とする資質・能力について、技術分野は「実践的・体験的な活動を通して、(中略)生活や社会の中から技術に関わる問題を見いだして課題を設定しそれを解決する力や、よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、適切かつ誠実に技術を工夫し創造しようとする態度等を育成すること」、家庭分野は「実践的・体験的な活動を通して、(中略)生活の中から問題を見いだして課題を設定しそれを解決する力や、よりよい生活の実現に向けて、生活を工夫し創造しようとする態度等を育成すること」と示されており、授業ならびに学びの方向性が明示された。学習指導要領を読み解いた場合、技術・家庭科の授業で、ペア学習やグループ学習を取り入れたり、ものづくり等の実践的・体験的学習を行ったりするだけでは、「主体的・対話的で深い学び」を実践したとは言い切れない。必要となるのは、単に活動型の学習方法だけを取り入れるのではなく、思考の深さや自己評価活動、また、生徒の生き方などに関連する主体的・協働的な学習の実現であると考える。こうした学習活動を通して、生徒は生活に必要な知恵と知識を習得することが可能となり、持続可能な社会の構築に向け、進んで工夫したり創造したりする能力を身に付けることができると考える。予測困難で急速な変化を伴う社会を生きていく生徒たちが、生涯にわたって持続可能な社会を構築する一員として、より豊かな人生を歩んでほしいと考える。授業実践の中で、生徒自らが行った問題解決的な学習活動について問い直す場面を位置付ける必要性について考慮し、県や三教研の研究テーマに沿って、研究テーマを「よりよい生活の実現と持続可能な社会の構築に向け、自ら工夫し創造する生徒の育成」とする。
学習指導要領より、以下のことに重点をおいて研究を進めていく。
【技術分野】
○ 第1学年、ガイダンスの場面で「A材料と加工の技術」から「D情報の技術」 までに示す技術について触れながら、どう進めるべきかを工夫する。
○ 「A材料と加工の技術」について、我が国の伝統的な技術や緻密なものづくりの技などが我が国の伝統や文化を支えてきたことに気付かせる題材を選ぶ。
○ 「B生物育成の技術」について、作物の栽培、動物の飼育及び水産生物の栽培をどのように扱うかを研究する。
◎ 「D情報の技術」において、プログラミング学習を小学校で経験した子供に対して、興味深く学べる教材を早目に準備する。また、「プログラミングによる計測・制御」並びに「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」を充実させる。
【家庭分野】
○ 「A家族・家庭生活」について、高齢者の身体の特徴や、高齢者の介護の基礎に関する体験的な活動ができるような題材を工夫する。
○ 「B衣食住の生活」について日本の伝統的な生活文化を継承する大切さに気付くことができる題材を研究する。また、食事を共にする意義や食文化を継承する大切さに気付くことができる題材を研究する。
○ 日本の伝統的な衣服である和服についてどのように触れ、和服の基本的な着装をどのように扱うかを研究する。
◎ 新設された「A家族・家庭生活」における「高齢者など地域の人々と協働することに関する内容」並びに「C消費生活・環境」における「計画的な金銭管理、消費者被害への対応に関する内容」を充実させる。
さらに、学習指導要領では、技術・家庭科の「見方・考え方」を働かせ、実践的・体験的な活動を通して、よりよい生活や持続可能な社会を構築する資質・能力を育成することを目指している。実際にどのような授業を行い、どう指導していけば、目標とする資質・能力を育成することができるか、また、同じ目標であるSDGsのフィルターを通して、研究を進めていきたい。
【参考】
<技術の見方・考え方>(技術分野)
生活や社会における事象を、技術との関わりの視点で捉え、社会からの要求、安全性、環境負荷や経済性などに着目して技術を最適化すること。
<生活の営みに係る見方・考え方>(家庭分野)
家族や家庭、衣食住、消費や環境などに係る生活事象を、協力・協働、健康・快適・安全、生活文化の継承・創造、持続可能な社会の構築等の視点で捉え、よりよい生活を営むために工夫すること。
2 研究の内容
(1)目指す生徒像
生徒が持続可能な社会の構築に向け、進んで工夫したり創造したりするためには、身の回りのさまざまな情報を適切に取捨選択し、多様な価値観と判断力を身に付けることが重要だと考え、目指す生徒像を以下のように示す。
よりよい生活の実現と持続可能な社会の構築に向け、既存・既習の知識や考えを応用するだけではなく、新たな視点を取り入れたり、それまでとは違った角度から発想したりして、自ら工夫し創造することができる生徒 |
(2)研究の手だて
① 新たな発想を生む単元・題材とSDGsにつながる学習課題の設定
自ら課題に対してよりよい解決(最適解)を求め、これまでの解決方法の選択に終わらず、解決方法の応用や新たな発想を求めて対話に向かう学習課題を工夫する。また、目標が持続可能な社会の構築に向かうものであるかを明らかにするために、SDGsのフィルターを通して、問題解決的な学習を仕組む学習課題を設定する。
② 一斉授業を脱却した個別最適化学習の充実
一斉授業を脱却し、ICTを利用したり、意欲的にものづくりに取り組む教材を活用したりすることで、子供が主体的に学び、一人も取り残さない個別最適化学習の実践を充実させる。
③ 見方・考え方を通して、工夫・創造する資質・能力を育む問い直しの場面の設定
最初の解決方法から、さらによりよい解決方法に思考を変容させるには、他者や対象物との対話が必要である。対象物からどのような情報を得るか、他者にどのような考えを求め、他者の考えをどのように吸収するか、何をトレードオフするかが大切である。そのために、「技術の見方・考え方」と「持続可能な社会の構築に向けた学習であるか」の2つの点に重きをおき、問題解決的な学習を問い直す場面を工夫する。
④ 振り返り活動の充実
他者や対象物との対話を通して、自分の思考の広がりや深まりを意識し、次時への課題と目標が見つけられる活動を目指す。