研究の概要
Ⅰ 研究の概要
1 研究主題
学習指導「学習習慣の確立」
自ら進んで学び続ける子の育成
~学びのルールの定着と発信力向上を目指す個の支援の工夫~
私たちは、子供たちに確かな学力をつけたいと、毎日の授業に臨んでいる。確かな学力とは、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得、そして、これらを活用した課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力と考えている。こうした確かな学力の習得のために、学習意欲の向上、学習に取り組む主体的な態度、そして、学習習慣を確立することが大切であると考え、研究主題を設定した。昨年度から、過去の研究の積み上げを活かしながら、本校の課題の一つである「学んだことを進んで発信する力」に重点を置き、自ら進んで学び続ける子の育成を目指し、少しずつではあるが、自分で調べたことや考えたことを発信する力が育ちつつある。本年度も発信力向上を目指しながら、学びのルールの定着にむけ、研究を進めていきたい。
2 目指す子供像
校訓「自立」のもと、これまで目指してきた「自ら進んで学びとる子」に、研究テーマ「学習習慣の確立」の視点を当て、目指す子供像を「自ら進んで学び続ける子」とした。目指す子供像「自ら進んで学び続ける子」は、自ら課題意識をもち追究できる子、授業で学んだことを振り返り、定着させ、次の授業に行かせる子、授業で学んだことを家庭学習に生かせる子を目標に、次のように定義した。
「自ら進んで学び続ける子」
・自ら課題意識をもち進んで課題追究に取り組める子
・学んだことを進んで伝え発信しようとする子
・学んだことを振り返り、家庭学習や次時の学習に生かせる子
3 研究の仮説
学習課題に対して、一人一人が予想や見通しを立てて取り組み、自己の考えを発信し、話し合いの中で考えを練り直し、最後に学習を振り返るというプロセスを継続していけば、自ら進んで学び続ける子に育つであろう。
4 今年度の研究の視点
(1)一人一人の考えを活かした授業づくり
本校は、最大で一学級9人という小規模の学校である。個々に寄り添って指導でき、一人一人の学びを生かす場を多くとれるという良さがある半面、教師に頼りすぎて自ら進んで課題を解決していったり、考えを発信したりする力が弱い。そこで、以下のことに重点を置き、授業づくりの改善を図る。
①学習の「めあて」づくり
授業の導入で、子どもに驚きや疑問を感じさせるような具体物・具体的な資料を提示する。そこで感じた疑問や課題をそれぞれの子ども自身の言葉で表現し、学習のめあてを作成する。子ども自身にめあてを考えさせることで、子どもの追究意欲が涌き、学習意欲の継続を図ることができる。教師は、できるだけ多くの子どもの疑問を見取り、学習のめあてを板書する。
②一人一人に合った追究過程
めあてを確認した子どもに、小規模校の特性を生かし、個々に予想や見通しを立てさせて追究過程に入る。教師は、全員の予想や見通しを机間指導で把握し、個に合った支援や助言を行う。追究も、できる限り個々の力で解決できるよう努力させる。
【例】理科:小規模校の特性を生かして、一人一実験を行う。
社会科:資料から見つけたことを全員に発表させ、意見をグループ化していく。
体育科:それぞれの能力に合った器具やコースを設定する。
また、昨年度からおこなっている「わくわくプロジェクトE」を、本年度も引き続き行い、子供たちが興味をもったことを追求していけるようにする。すべてを児童任せにするのではなく、教師が適切に支援しながら、子供たちが自分で考え、解決していく力をつけていきたい。本年度はノートや資料を見ながらの発信にとどまらず、自分の言葉で発信できるような支援を考えていきたい。
③関わり合う場の設定
これまでの研究実践から、進んで発言する子供、大きな声ではっきりと伝える子供がまだ少ないのではないかという課題が残された。授業の中で、自分の意見を発表するだけで終わるのでなく、「他者の意見についてどう思うか」など、チーム学習やペア学習など他者とかかわり合う場を保障する。小規模校の特性を生かして、できる限り多くの意見を検証できるようにする。そのときにスクールタクトやコラボノートなどのICTも積極的に利用していきたい。時には、全員の座席を寄せて、課題に対して子どもたち自身で役割を決めて話し合うこともできると良い。子どもは、関わり合いによって新たに気付いたことや自己の考えを再構築したことをノートに記していくことで、学びの蓄積を図らせたい。
④学びの振り返りの場の保障
各授業の最後の5分間で、「振り返り」の時間を設定する。振り返りの前には、本時のまとめをしっかりおこなっていく。振り返りは、単にその授業の感想ではなく、その授業を終えて解決した疑問点や新たに調べたいこと、他者の意見を聞いて思ったことなどを書くようにする。教師は、机間指導して、本時に対する考えや思いの質が向上している子どもや次時への課題が明確となっている子どもの振り返りを意図的指名で発表させる。少人数の良さを生かし、すべての振り返りを教師が朱書きで認めてあげることによって、次の疑問や追究意欲へとつながり、子どもの学びの継続を図る力となるようにしたい。こうした教師の意図的指名や朱書きを意識的に、また継続的に行っていくことで、児童の振り返りの質を高めていきたい。
(2)学びのルールの確立
授業を行う上での基本をしっかりと守らせた上で、授業に臨む。児童が自分で意識的できるように、学びのルールを黒板上に掲示する。
【児童】
・授業開始のチャイムが鳴る前に着席する。始業就業の挨拶をきちんと行う。授業の準備は、前の授業が終わったと当時に行う。
・床に両足をつけ、背もたれにもたれかからず、正しい姿勢を確認する。正しい鉛筆の持ち方も心がける。
・机の上を整頓し、余分なものを置かない。
・教師の話を聞くときは、書くものを置き、正しい姿勢で聞く。
・挙手する場合は、無言で右手をまっすぐに上げる。
・自己の意見を述べる場合は、他の児童の方を向いて発言する。
・発言を迷ったら、「たぶん・・・」と挑戦する。
・他の児童の発言を聞くときは、必ず発言している児童に体を向ける。よそ事をしない。
・指示された内容の活動以外のことを行わない。
・発言のルールを守る。他の児童が発言しているときは、最後までしっかりと聞く。
【教師】
・授業の開始は、チャイムと同時に行う。
・延長授業は絶対に行わない。授業10分前にその授業の着地点を決め、5分前に振り返りに入れるようにする。
・導入時に既習知識や初発の気づきを出し合う場をつくり、児童の言葉でめあてづくりを行う。「めあて」は必ず板書し、赤チョークで囲む。
・チョークを正しく使う。 白:文字(めあて、おもな記述、事実、意見)
黄:文字(大切な言葉、大切な児童の意見や核となる疑問)
赤:囲み、ライン(重要意見の強調、同意見)、矢印(関連)
その他:囲み、ライン
・ネームマグネットを積極的に活用する。(自己の考えや立場を明確にするために児童が貼ってもよい)
・児童の名前を呼ぶときは、「○○さん」。呼び捨てはしない。
・児童が意見を言っているときは、必ずその児童の方を向き、うなずいて聞く。多くの発言を促したいときも、「他に」という言葉は使わない。すべての発言を認めてあげる。
・挙手が少ない時、待ちの姿勢をもつ。悩んでいる児童に発言を促す。
・机間指導を随時行い、児童のよい気付きを称賛し、つまずきや迷いに対して助言するだけでなく、意図的指名をするようにする。
・一問一答の発問ではなく、多様な考えを引き出せる発問を心がける。一人の児童の意見が言いっぱなしにならないように、他の児童にその意見についてどう考えるかを問う。
・小規模校の特性を生かし、全員が必ず参加できる授業を行う。
(3)伝える力と発信する力の向上
わくわくワークショップでの保護者のアンケートからは、「思った以上に発言する力がついてきている」と感じていることがわかった。児童のアンケートからも、自分で考えたことを発表することに苦手意識をもっている児童が減ってきていることが分かった。しかし、実際の発表の様子を見ていると、ノートに書いてあることを読んでいたり、ときどき他の児童の方を見ることができていたりする程度で、まだまだ発信力が向上したとは言い難い状態であると感じる。そこで、児童、保護者、地域の方たちの前で発表する機会を引き続きもつようにしたり、学級会や全校集会などで司会を輪番制で行ったりするなど、小規模校の良さを生かし、すべての子どもに人前に出る機会を与えていきたい。
- コメントシートの活用
国語や算数に関わらず、他教科へもコメントシートの活用を広げていったことで、教師がいろいろ工夫しながらコメントシートにとりくむようになった。ノートだけでなく、ワークシートや作品などから、保護者が学習の様子を知り、コメントシートにがんばりを認めたり褒めたりする言葉を書くことで、読んだ子供たちは学習への意欲を高める。見方を広げたり、新しい視点に気づくことにつながったりすることもある。また、コメントシートを保護者に書いてもらうときに、子供との会話をもつようにしてもらい、子供たちが発信する場も確保していくことを重点的に行っていきたい。
② わくわくプロジェクトEの活用
先にも述べたが、子供たちがそれぞれの課題を追求していく場を設定したことで、周りへ発信したいという意欲を高めたい。調べたこと、分かったことをワークシートに記録するだけでなく、Teamsを利用して学校中へ発信したり、家庭や学区に発信する場をつくっていったりしていきたい。