Ⅰ 研究の概要

1 研究主題

岡崎市教育委員会研究委嘱  学習指導「学習習慣の確立」

自ら進んで学び続ける子の育成

~家庭と連携した学習ノートの活用を通して~

 

2 主題設定の理由

(1)「生きる力」の育成

 生きる力を育むことを目指した新学習指導要領では、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得、そして、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力の育成が求められている。さらに、こうした確かな学力の習得のために、学習意欲の向上、学習に取り組む主体的な態度、そして、学習習慣を確立することが重視されている。

(2)研究委嘱の内容

 岡崎市から委嘱を受けたテーマは、「学習習慣の確立」である。主体的に学ぶ意欲と学ぶ姿勢を支えるための学習習慣の確立は、確かな学力を習得し、生きる力を育むために必要不可欠である。

<研究の視点>

①学校生活を通じて、子どもたちが確立すべき学習習慣の具体的なあり方
②家庭との連携を図りながら学習習慣を確立するための具体的な方策
③基礎的・基本的な知識・技能習得のための学習習慣を育む授業のあり方
④英語力育成を目指す岡崎市小学校英語カリキュラムの実践的検証

(3)地域の特性、及び子どもと保護者の現状

 本校は、岡崎の北部山間に位置する小規模な学校であるが、平成10年度に新興団地が学区に編入されたことで児童が増え続け、平成20年度には児童数が160名を超える学校となった。しかも、その中の130名が新興団地から登校するという、「町の子が通う山の学校」となった。現在は、逆に毎年児童数は減り続け、111名となっている。
本研究初年度の児童と保護者に対して行った「生活・学習アンケート」から、本校児童の学習習慣にかかわる状況が次のように見えてきた。

○ ほとんどの子どもたちは、早寝、早起き、朝ごはん、家族と一緒の食事、あいさつ、手伝い等、基本的な生活習慣が身についている。
○ テレビやビデオの視聴、ゲームに費やす時間も家の人との約束を守って行っている。
○ ほとんどの保護者が本校の教育活動を理解し、協力してくれている。
○ 保護者に学習日記、自主学習ノートへのコメントをお願いした時、子どもへの励ましの言葉を書いてくださる方が多かった。
△ 宿題をする習慣は身についているものの、読書や授業の予習・復習等の自主的な学習の習慣を身につけるまでには至っておらず、授業中に進んで自分の意見や感想を発表できている子が少ない。
△ 学習習慣の確立に向けての要望を聞いたところ、どの学年の保護者からも「もっと宿題を出してほしい」等、宿題に関しての要望が多く寄せられたが、子どもの家庭学習に親がどう向き合えばいいのか分からないという意見も見られた。

このような現状から、「今日の授業から、自分のために、家でここを学習してきたい」といった子どもの自ら学ぶ意欲を向上させなければならないと考え、学校と家庭とが連携して子どもの「学習習慣の確立」を目指す本研究を進めることにした。

 

3 目指す子ども像

 校訓「自立」のもと、これまで目指した「自ら進んで学びとる子」に、新たな研究テーマ「学習習慣の確立」の視点を当て、目指す子ども像を「自ら進んで学び続ける子」とした。

 目指す子ども像「自ら進んで学び続ける子」は、授業で学んでいることを家の人に伝えて話題にできる子、授業で学んだことから課題を見つけて家庭学習(宿題・自主学習)ができる子、家庭学習でしたことを授業に生かせる子を目標にして、次のように定義した。

「自ら進んで学び続ける子」

授業で学んでいることを家庭でも学習し、家庭学習を生かして授業に取り組む子

 

4 研究の仮説

 本研究では、国語と算数の学習ノートを通して家庭との連携を促すことで、「学習習慣の確立」を目指すことにした。保護者が学習ノートを見ることで「学習内容」が親子の話題となり、そのコミュニケーションの積み重ねが学習習慣づくりにつながり、学力が向上すると考えた。文部科学省からも「学習習慣の確立は、児童生徒の学力に重要である。学習習慣には、基本的生活習慣と家庭でのコミュニケーションが影響している。」(H20年12月発表)とある。

 国語と算数の学習ノートを工夫することで学校と家庭の学習をつないだり、学習ノートを活用した授業展開を工夫したりすれば、学校と家庭の両学習への意欲を高めるとともに継続的に学習をするようになり、自ら進んで学び続ける子に育つであろう。

 

5 研究の手立て

手立て1 学校と家庭の学習をつなぐ学習ノート作り

①学習の振り返りができ、家庭学習の意欲を高める板書
②振り返りに対して評価と助言をし、家庭学習(宿題・自主学習)につなぐ工夫
③保護者からのコメントを生かした学習ノート作り

手立て2 学習ノートを活用した授業展開

①家庭との連携(保護者のコメント、家庭学習)を生かした授業展開
②課題に対する自分の考えを書き表す活動を取り入れた授業展開
③子どもをやる気にさせる教師の朱書き

手立て1    学校と家庭の学習をつなぐ学習ノート作り

 家庭で親子が学習ノート(国語・算数)を使ってコミュニケーションをとるため、次のような要素を入れたノート作りを基本にし、指導する。


 このような国語と算数の学習ノート作りをし、学校での学習も家庭での学習も一冊で進める。保護者は子どもの学校での学習の様子が把握しやすくなり、子どもに、がんばりを認めて褒めたり、励ましたりする言葉を掛ければ、子どもの学習意欲は高まるであろう。

 そこで、保護者のコメントを添付することができる保護者コメントシートを考案した。

 保護者のコメントで使用する用紙は、何度でもはがせて貼れる糊が裏全面に付いているものを使用する。学習ノートからはがしてコメントを記入して貼り直したり、集めて活用して再度貼ったりすることができる。

 用紙は、国語を黄緑色、算数を黄色、英語を桃色のものを使用し、枠と校章を印刷して恵田小学校のコメントシートとして使用する。学校で取り組んでいることが子どもにも保護者にも一目で分かる形にする。

①学習の振り返りができ、家庭学習の意欲を高める板書

 板書は、1単位時間の学習の流れと学習のポイント、解決できたことと次の課題が明確になるように、記号や囲み線、色チョークを使う。保護者のコメントや子どもが家庭学習(自主学習)してきた内容も板書する。授業の終末に板書を見て、学習ノートに「今日の学習で分かったこと、できたこと、できなかったこと、できるようになったこと」「参考になった友達の考え」「もっとやりたいこと、家庭学習(自主学習)でしたいこと」などを振り返りとして書くことによって、子どもが今の自分のために何を学ぶとよいのか、何を学習したいのかが明らかになっていく。

②振り返りに対して評価と助言をし、家庭学習(宿題・自主学習)につなぐ工夫

 授業計画の段階で、子どもに身につけさせたい力や評価規準を明確にしておき、授業の終末に子どもの学習の振り返りを見て、評価と助言をする。授業の中で振り返りを発表した子どもにはその場で評価と助言をし、発表できなかった子どもにはノートを集めて朱書きする。そこで十分な学習ができる子には、適用問題や発展問題を勧めたり、予習的な学習を勧めたりする。不十分な場合には、再度学習するとよい問題の復習やその練習問題を示す。そうすることで、子どもは徐々に自分から学習を振り返り、家庭で学習する内容を書くようになっていく。

③保護者からのコメントを生かした学習ノート作り

 保護者は子どもの学習ノートを見て、今どんな学習をどのようにしているかを把握し、 子どもの学習のがんばりや良いところを見つけてコメントを書く。学習ノートに貼る保護者のコメントシートには、子どものがんばりや良いところを認め、褒め、励ます言葉や、学習のアドバイスを書くように、学級通信等で依頼する。 例えば、特別支援学級や低学年の子どもは、学習の振り返りの文を「おかあさんあのね」の書き出しで書く。保護者は直接的に語りかけるコメントになっていく。そのようなコメントをノートに位置づけることで、子どもの学習意欲を高めていく。

手立て  2   学習ノートを活用した授業展開

 学校と家庭の学習、保護者のコメントなどが入った学習ノートを授業で活用することで、子どもに授業と家庭学習のつながりを意識させ、両学習の意欲と学び続ける力の向上を図っていく。               

①家庭との連携(保護者のコメント・家庭学習)を生かした授業展開

 保護者のコメントや家庭学習を授業で活用する場合、その内容によって活用する場とねらいが変わってくるが、次のような活用の仕方が考えられる。

ア 導入で、子どもが家庭学習(宿題・自主学習)をしてきた内容を使って復習する。

イ 導入で、保護者のコメントを紹介し、課題解決への意欲を高める。

ウ 展開で、家庭学習を振り返り、学習活動を進める。

エ 展開で、保護者のコメントを提示し、子どもたちの学び(考え)を価値付けたり、確かなものにしたり、揺さぶったりする。

オ 整理で、家庭学習(宿題・自主学習)が生かされたことに気づかせる。

カ 整理で、保護者のコメントを紹介し、学習のまとめに関連づける。

②課題に対する自分の考えを書き表す活動を取り入れた授業展開

 学習ノートに課題に対する自分の考えを、言葉だけでなく、図や絵を描いて視覚的に表して考えていくと、課題解決の糸口が見えてきたり、自分の考えがまとまってきたりして、発言しやすくなる。また、保護者にとっては子ども理解が深まる。

 国語科では、課題に対する話し合いをする前に、それぞれが自分の考えをもてるように書き表す活動をする。算数科では、課題に対して図や式、説明などを書いて自分の考えを明らかにし、みんなで考えを出し合い解決をしていく。

③子どもをやる気にさせる教師の朱書き

 子どもは、励ましや揺さぶり、助言などの言葉以外にも、自分がしたことを認められ、褒められて自信をもちながら育っていく。そこで、教師は朱書きをして認めたり、褒めたり、揺さぶったりして自信をもたせておき、そして、朱書きをした意図を踏まえ、指名順や意図的指名に生かす。